申立て代理人と破産管財人
2021年08月01日

役立たずの弁護士が、五人も…

以下は、去る日相談に訪れた依頼人から聞いたはなしである。

東京に隣接している県の建設業の経営者が、経営危機に陥ったのでさまざまな手づるを頼って弁護士に相談に行った。
その経営者は、破綻は覚悟しているがどのような選択肢があって、どれを選ぶべきかを確認したうえで、破綻処理をお願いするつもりだった。

最初の弁護士は、概要を聞いた後で、
「これは破産しかないので、この用紙(破産申し立てに必要な記述事項)を埋めてからもう一度いらっしゃい」
と言って、法外な費用を告げた。
その後はどのような質問にも答えることはなかった。

二番目の弁護士には、聞きたいことを聞こうと思って、次のことを聞いた。
「売掛金があるのですが、そのお金は自由に使えるのですか」
弁護士は答えた。
「それは[詐害行為]のおそれがある。そんなことをしたら大問題になるので、受けられないので帰ってください」
ここでも、その後はどんな質問にも答えることはなかった。

三番目の弁護士は、概要を聞いた後で費用を告げたが、その費用は[予納金]、[弁護士費用]、[実費]などで、300万円を超えていたので、次のように訊ねた。
「そんな費用はないので、もっと安くなる方法はありませんか」
弁護士は答えた。
「ありません。その費用が用意できなければ受けられません」
ここでも、その後はどんな質問にも答えてはもらえなかった。

四番目の弁護士は少し親切そうだった。
ただし、
「わたしにまかせればうまくやってあげるから、心配はするな」
と言うばかりで、その後は何を聞いても、
「心配しないで、まかせておきなさい」
と言うばかりでどのように運用するのかはさっぱりわからなかった。

五番目の弁護士に会うときには、質問事項をメモにして面談早々そのメモを渡した。
弁護士は言った。
「これらはとても微妙な問題をはらんでいるので、一概には答えられないことばかりだ。そんなに心配ならほかの弁護士に当たってくれ」

この依頼人は絶望した。

以上、簡潔に記したが、決して虚偽ではない。
上の五人の弁護士のプロファイルを確認できているケースもある。

上の五つのケースを、わたしの対応方法と比べてみる。

・最初のケース
わたしなら、まずいくつかの選択肢をあげて依頼人と相談する。
事業継続の可能性は必ずあるのだ。
ただしそれには資金が必要だったり、時間が必要だったり、周りの支援が必要だったりするもので、それが難しい場合にはじめて破綻処理の結論に至るのだ。
破綻処理は、当事者の意思が明確でなければ、決して進めてはいけないと考えている。

・二番目のケース
[詐害行為(さがいこうい)][偏頗弁済(へんぱべんさい)]に抵触する恐れがある場合、弁護士は嫌がる傾向にある。
それは破産管財人が出てきたときに、対応しきれるかどうか(依頼人が守れるかどうか)が問題となるからだろう。
しかし、[連鎖倒産]や[連鎖破産]が出そうなときには、最後までそれを回避する方法を考えるのはわたしの仕事なので、はなからは決して放棄しない
申立て前処理の段階でそれが回避できそうな場合には、必ず弁護士にその旨進言するようにしている。

・三番目のケース
安価に処理したい、というのはほとんどすべての依頼人の思いだ。
そのためには、まず考えることは[少額管財]の実現と、破綻時に使える費用をより多く確保すること、そして弁護士費用の軽減。
それらを徹底的に追求することもわたしの仕事だ。
弁護士の中には破産関連の作業をあまり経験していない人も多い。
破産処理は経験量が必要な領域で、それがないとこのような対応はできないだろう。

・四番目のケース
一番目のケースでも記したように、わたしは依頼人に残された選択肢を必ず説明ようにしている。
これは、わたしに倒産経験があるからにほかない。
会社の倒産。そして個人の自己破産は、それはどのような種類がありどのような影響があるのか。当事者ならすべての方が事前に知っておきたいことだ。
それを納得していただくために、選択肢を説明し、どのような影響があるかは説明しておくことにしている。

・五番目のケース
弁護士にとって、倒産、破産の案件は単なるお仕事(商売)以外のなにものでもないので、このような対応の弁護士は多いのだ。
要はめんどくさいのだ。マニュアル通りに、簡単にできる方法を選びたいのでそうなるのだ。
わたしの場合は決してそのようなことはなく、たとえ微妙な問題を抱えていても質問にはすべて答えるし、問いかけられた質問以上に必要なことは説明している。

今までわたしは依頼人が探してきた弁護士と打ち合わせをすることもあるが、役に立ちそうな弁護士は、そう、三十人にひとりもいないものだ。

小規模零細企業の経営者というのは、全存在(全財産)を懸けて経営に当たっているものだ。
一方弁護士にとって、倒産の案件は〝お仕事〝でしかない。
それはそうだろうが、そう扱われることは経営者にとってはとてもつらいことなのだ。全存在が否定されるように思うのだ。

わたし自身に倒産経験があり、さらに弁護士にそのようにあしらわれた経験があるから、このことは痛いほどわかるのである。
わたしは数人知っているが、このような小規模零細企業経営者の心理的な機微を、承知していただける弁護士はもっといないものだろうか。

※ このエントリーは2012.12.26.に書かれたものだが、最近同じようなことがあったので最近の事例にあわせて2014.9.1.に修正した。

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