倒産の実態
2018年07月29日

詐害行為(さがいこうい)とは

経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。

今回は、「破産申立て」をするに至った経営者が気をつけるべき問題【詐害行為(さがいこうい)】について解説します。

倒産に際して、

・連鎖倒産を防ぎたい

・お金を貸してくれた親族に迷惑をかけたくない

とお考えの経営者の皆さんはぜひお読みください。




詐害行為とは何か


破産申立てに際して「詐害行為があると問題が生じる」という話をお聞きになったことはありませんか。

まずは、【詐害行為】という言葉の意味からご説明しましょう。

【詐害行為】とは、破産処理に際して破産者である債務者(会社であれ個人であれ)が故意に自己の財産を減少させ、債権者が正当な弁済を受けられないようにする行為を指します

【詐害行為】に対しては、[詐害行為取消権]というものがありますので、債権者や破産管財人に指摘され、破産管財人に詐害行為であると否認されればその分を返還しなければならなくなります。

破産処理にはいくつかの原則があるのですが、

・債務者の財産は換金され債権者に配当され

・優先債権(税金、社会保険、労働債権など)を除き、配当は債権者に一律でなければならない

これらのルールに違反することが【詐害行為】となるのです。

ではどのような行為が【詐害行為】となるのでしょうか。
具体的には

・破産申立て直前に、不動産などの財産を誰かに贈与したり安く売却したりすること

・破産申立て直前に、不動産などの財産に担保権を設定すること

・破産申立て直前に、特定の債権者に支払いを起こしたり返済すること

・破産申立て時に認められている自由財産以上の現金や預金を隠したりすること

などがあります。

先ほども申し上げたように、明らかに詐害行為があり債権者等に指摘されれば、破産管財人によって否認され、動いた財産は元に戻されることになってしまうのです。

詐害行為の大きな問題点


ただ、ここに大きな問題があります。

仮に、破産申立て直前に会社に[500万円]の現金があったとします(給与などの労働債務はないものとします)。

そのまま破産を申立てれば、優先債権である未払いの税金や社会保険に充てられてしまうか、債権者への配当となってしまいます。

しかし、どうしても返済したい個人からの借入金(例:母親から300万円借りた)や、連鎖倒産しそうな会社の買掛金(例:零細企業5社に計200万円ある)に回すことはできません。

倒産する者の意志としては、個人からの借入金(恩借)の返済や連鎖倒産しそうな会社の買掛金に回したいのは当然ですが、もしそれを申立後にしたら詐害行為になってしまいます

このような場合、では申立代理人の弁護士に相談するとどうなるのでしょうか。

残念ながら、かなりの確率で「No!(それはできません)」と言われてしまうのです。

「連鎖倒産を防ぎたい」「恩借を返済したい」時はどうすればいいか


しかし、申立て前処理の段階でこれを実行すれば、救済されることはあり得るのです。

詳しくは、【申立て前処理について】をご参照いただければと思いますが、

ポイントとなる要素は下記です。

・倒産の全体の規模に対して、優先して支払いたい債務の比率

・優先して支払いたい債権者の数

・その債権額

・支払いから申立てまでの期間

・事業停止から破産申立てまでの期間

・債権者の全体像(数と金額)

・申立代理人の弁護士が協力的

これらの条件が厳密にクリアできれば救済される可能性はあり得ますので、どうかあきらめずに対応策を探っていただきたいと思います。

詐害行為を恐れて何もしない、は避けたい


倒産する者にとって、万が一【詐害行為】になる可能性があっても、被害を最小限にとどめるために優先的に救済すべき債権者はできるなら救済したいというのが本音でしょう。

それを実現できる可能性があるのに、本来は依頼人の利益を守るべき弁護士である申立代理人によって、その芽を摘まれるのはとてもつらいことです。

が、破産処理の運用では先ほども申し上げたように、[詐害行為取消権]が行使されたとしても(される可能性がある場合でも)、詐害行為であると否認された分だけ元に戻せばよいのです。

詐害行為があるケースでは、破産自体が認められないというわけではないのです。その部分だけ元に戻せば破産自体は実現できるのです。

そうした可能性があるのに、申立代理人によって「それはできない!」と言われてしまうことは実は大変多いのですが、破産処理の運用を知らない経験の浅い弁護士だとそのようにしか判断できないのです。

わたし自身は、このような事態での“見逃しの三振“はしたくありません。

“最後までバットを振るべき”だと思うのですが、こうした経営者の意図に協力していただける、倒産処理に詳しい弁護士はかなり少ないのが現実なのです。

ではどうやってこれを実現するのかは、きわめて難易度の高いことなのですが、”針の穴に糸を通す”ように綿密に進める方法はあるのです。

残念ながらここには詳しく書けませんので、どうかご相談にいらしていただければと思います。

付記:「連鎖倒産を防ぎたい」「恩借を返済したい」方はご相談にお越しください


こうした【詐害行為】や【偏頗弁済】に関するご質問やお問合せは大変多いです。

しかし、【詐害行為】や【偏頗弁済】に関わる問題については、破産申立後に、申立代理人の弁護士は破産管財人とやりあう局面も想定できます。

つまり、申立代理人弁護士にとっては「非合法なことではないが”懲戒問題”にも及びかねない大変デリケートな要素」をはらんでいるのです。

この問題の特性から、申立代理人の弁護士や破産管財人から情報が表に出てくることはないでしょうし、「こうすればうまくいく」といった情報もネット上にはおそらくはないと思われます。

当事務所は、25年以上940件以上の倒産・経営危機相談に対応し、可能な限り【詐害行為】や【偏頗弁済】を回避してきた実績があります。

もちろん、そのような相談に乗っていただける「倒産問題に長けた」弁護士もいます。

*詳しくは[弁護士(申立て代理人)の紹介]はこちら

この記事をご覧の方で、【詐害行為】に該当するかどうかを知りたい方、つまり「連鎖倒産を防ぎたい」「お金を貸してくれた親族に迷惑をかけたくない」は、ぜひ当事務所にご相談にお越しください。かなり明確にそのガイドラインを示すことができます。

「100の倒産があれば、100の背景がある」ものですから、一律に「こうなります」とは断定できないことはご了承ください)

(初出:2014年9月17日 最終修正:2021年1月15日)

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