倒産の全貌
2018年11月03日

ある問い合わせ

先日、経営危機に関する問い合わせのメールがある経営者から到着し、わたしがそれに答えたものが以下である。
こうしたメールは時々来るが、実際に相談に来られる方は稀だ。
(このメールのケースでは返事もいただいてない)

以下、経営者からの質問を◆部分にて、わたしからの回答を▼部分にて記します。

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□□ さんへ

メール拝見しました。

わたしはプロのコンサルタントですので、無償での問合せには対応していませんので、ご質問のすべてにはお答えできませんが、いくつかの感想を以下に書きます。

◆銀行の借り入れには取締役である私が連帯保証人になっており、自宅と土地が担保になっています。
クレジット契約(リース)は連帯保証人予定者になっています。
滞納税が40万円、滞納社会保険料が80万円あります。


この状態では(契約書などもあるでしょうから)、金融機関から抵当権か根抵当権の担保(ご自宅不動産)の執行が行われると思います。
それらを検討する前に、主債務者である(おそらくは)会社の債務環境がわからないと、優先順位がはっきりしないのでご自宅不動産だけの判断はしかねます。
具体的には、自宅不動産の競売と、(あればですが)□□さんの個人資産の差し押さえです。
税金も社会保険も差し押さえしてくるでしょう。
それを避けるためには、いくつかの対応策はありますが、有能な弁護士を代理人に立てるしかないでしょう。
こうした交渉の代理人には弁護士しか認められていない(代理権)ので、それを最優先にすべきです。
代理人の弁護士を確保しても、お望みが実現するという保証はありません。

◆私自身個人財産も現金がほとんどなく、
身内に協力をお願いしてみたところ、400万円までは借りられそうな状況です。
しかし全額返済して清算するには、まだ足りません。


債務総額が[850万円]、用意できる費用が[480万円(借りられる資金+車売却費用)] では、大幅に債務超過ですから、□□さんがその残債を返済するか破産しなければならない状態だと思われます。
破産するとの判断があれば借入はしないほうがいいでしょう。無意味です。

◆この状況で
方法があれば、個人資産の家と土地、そして会社名義になっている車を残せるような解決方法をしたいとのぞんでいます。
そちらにお願いいたしましたら、そうできる可能性はあるのでしょうか?


ここに書かれている条件からは、大変難しいと言わざるを得ません。
車は(売却して)名義変更をすれば、残せる可能性はあります。
家と土地は、住宅ローンのあるなし(あるならばその残債金額)などの条件によっては競売になった後で買い戻すなどの可能性はあるかもしれません。

もう一度申し上げますが、ここに書かれている条件では希望的な観測はできないようです。
このような問題は、

・事業は何か、
・事業規模や社歴は、
・□□さん以外に代表取締役(や他の取締役)などはいるか、
・金融機関はどこか、
・個人資産の不動産の大きさや評価は、
・あるいは経営者の人間性は、

などヒアリングしなければならないことは膨大になるものです。

そのうえで、

・偏頗弁済に当たるのか、
・詐害行為に当たるのか

の判断もしなければなりません。

それらをしっかりヒアリングして、頼りになる弁護士を確保して、その上で針の穴を通すような方法で依頼人の財産を確保したり、次なるステップへの道程を模索することになります。
それが、わたしのプロとしての仕事です。
メールでかんたんに入手できるものではないと知ってください。

以上です。

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