法人の破産
2016年02月04日

倒産の費用(総額)

倒産とは、債権者(被害者)を残して、事業を停止することである。

それにはどのような方法があり、全部でどれくらいの費用がかかるのか。
100の倒産があれば100の決着があるのであり、費用のそれに応じて変動するものではあるのだが…。
これを判りやすく説明するのは至難なのだが、なるべく理解しやすいように記してみる。

以下、煩雑なリンクになるがそれらをトレースして、どうか理解していただきたい。

倒産処理の方法として一般的なのは、

・法的処理の[法人の破産]と、
・私的処理の[任意整理]

である。

法人の破産には、

[管財事件]と呼ばれるものと、
・簡易な[少額管財]

という運用方法がある。

また費用の項目としては

・裁判所に収める[予納金]と、
・申立て代理人である[弁護士費用]

がある。

これらの方法と費用の概要はおおよそ以下のようになる。

法人の破産(管財事件) 予納金=必(高額)  弁護士費用= 必(少額)  総額=高費用

法人の破産(少額管財) 予納金=必(少額)  弁護士費用= 必(中額)  総額=低費用

任意整理       予納金=不要     弁護士費用= 必(高額)  総額=中費用

[法人の破産(管財事件)]の費用

予納金

最新の運用では、小規模零細企業といえども倒産して[法人の破産]を申し立てると、必ず[破産管財人]が介在することになった。
(以前は法人の破綻処理は放置しても、個人の破産だけを受け付けていただけるような、簡易な運用もあった)

債権額が大きかったり、債権者が多かったり、規模の大きな倒産は、高額の予納金になる[管財事件]となる。
この破産管財人の人件費が予納金と考えていい。

弁護士費用(申立て代理人)

[法人の破産]の地方裁判所への申立て手続きは弁護士でなければ受け付けてくれないし、金融機関との折衝も“代理権”のある弁護士でなければ対応してくれない。

[管財事件]の申立て代理人は、申立て前処理(後述)はあまりやってはくれずに、すぐに地裁に破産の申し立てを行う傾向が強い。
なぜならば、申立て代理人の主たる仕事はその申し立てになるのだから、手間ひまのかかる申立て前処理はやりたがらないのだ。
詳しくは[倒産の費用(弁護士費用)]を参照。

破産管財人費用

これは、かからない。
破産申立てに際して納付する予納金と、破産者の財産を換金したもののうちの一部が破産管財人にわたる。
よって破産管財人の費用が改めて発生することはない。

しかしこれらの、[予納金]も[弁護士費用]も一律ではない。

倒産の規模などにより大きく変動する。
債権者が20社程度の処理と300社もある場合では、申立て代理人の弁護士の作業量も破産管財人の作業量も大いに違うので、これらは一律ではないのだ。

予納金については、管財事件に関しては負債総額に応じて(財産から負債金額を引いたものではなく、負債総額だけの合計金額)予納金額は大きく変動する。

要は、規模に応じて変動するのだ。
詳しくは[法人の破産(管財事件)の費用]を参照。

[法人の破産(少額管財)]の費用

法人の破産には少額管財という運用方法がある。
詳しくは[法人の破産(少額管財)]を参照。

少額管財の予納金

この場合の予納金は、負債総額にかかわらず法人と法人の代表者一人のセット([法人]+[自然人]の合計)で基準額は20万円となっている(東京地裁の場合。さらに諸雑費が二~三万円必要になるが)。

この[20万円]の基準額はこのところやや高騰化している(と言っても、難易度によって+10~30万円ほど)。
その理由は、管財事件の負債総額別の予納金の適用ほどではないが、少額管財の予納金(20万円程度)では破産管財人の作業量が多すぎるという理由によると思われる。

もちろん、少額管財が適用されるためには大きなハードルがある。
それは、結果として破産管財人が少額管財の予納金(20万円)程度でも対応していただけるように処理が簡略化されて申し立てられていなければならないことだ。

倒産する側からすれば、[少額管財]の運用方法を適用していただいて、費用負担を少なくすることを考えるのは自然なことだが、現実的に少額管財を採用していない地裁もあり、またその費用も流動的なところもあるので、なかなかそうはいかないこともある。

この少額管財を採用していただけるようにするためには、申立て前に破産管財人の作業量を少なくする[申立て前処理]が必要になる。
詳しくは[申立て前処理について]を参照。

少額管財の弁護士費用(申立て代理人)

少額管財を実現するためには、申立て代理人の弁護士に申立て前処理をしていただかなければならないので、その分割高になる。

管財事件の最低ランクである、会社の負債総額5,000万円未満の管財事件の予納金は、[法人=70万円]、[代表者=50万円]、合計120万円だが、[少額管財(法人と代表者ワンセットで)=20万円]になる。
その上のランクは、会社の負債総額1億円未満の管財事件の予納金は、[法人=100万円]、[代表者=80万円]、合計180万円だが、これも、[少額管財(法人と代表者ワンセットで)=20万円]になる。

弁護士費用が割高になるといってもその差額ほどには高くはならない。

詳しくは[法人の破産の弁護士費用]を参照。

[任意整理]の費用

任意整理は、法的処理ではないので予納金は発生しない。
この処理方法はいくつかの条件をクリアしなければならないが、結果としては低費用で破綻処理が実現できる方法である
詳しくは[倒産処理の種類 [B-b] 任意整理]を参照。

任意整理の弁護士費用

この任意整理は、処理できる弁護士が少ないのが問題なのだ。
なぜならば法的処理ではないので、裁判所の支配下で処理が行われるわけではないので、すべての債権者と対応しなければらないので、経験則がものをいうところが大きい。

経営知識、交渉力、胆力、がなければすべての債権者をうんと言わせるのは難しいい。
少なくとも一度以上の経験がなければ、委任するのは勇気がいる。
よって、費用も一定程度以上はかかる。法人の破産(管財事件)よりは安価だが。

詳しくは[任意整理の弁護士費用]を参照。

どの処理方法を選ぶか

倒産経験のあるわたしが見る限り、法的処理の[法人の破産(少額管財)]が最も安全で安価だと思われるので、わたしはこの処理方法をお勧めすることが多い。

ただ、100の倒産があれば100の決着があるとおりで、処理費用を最小限化することも大事だが、最終的に残せる費用を最大限化することも大事だ。
これらの方針選択は、わたしの事務所をお訪ねいただければ最適な方法を提示できるとも申し上げておく。

わたしは、依頼人の方に[法人の破産(少額管財)]が実現できるように対応すること、を最優先に考えて対応している。
有能な弁護士を探してきて、依頼人の利益が最大化できる申立て前処理を実現し、短期間で免責を得ることができるようにしている。

弁護士確保に関しては[弁護士(申立て代理人)の紹介]を参照。

※ このエントリーは、2013年9月19日に作成したものだが、より判りやすくするために、2016年2月4日に修正した。 

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