法人の破産
2017年03月29日

法人の破産において 少額管財を実現するための要件

経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。

法人および経営者個人の破産処理において、当事務所がお勧めするのは【少額管財】と呼ばれる倒産処理の方法ですが、これは従来の方法に比べて「予納金が安くて済む」「時間がかからない」というメリットがあります。

この【少額管財】について3回に渡ってご説明しています。

1.法人の破産において、少額管財を実現するための要件(この記事)

2.法人の破産における【少額管財】とは何か〜そのメリットと注意点

3.少額管財を実現するための【申立て前処理】について

この記事では、少額管財を実現するための要件についてお伝えします。

 

少額管財は、すべての法人の破産に適用される訳ではない

従来は、「法人の破産」の処理方法(運用)は「管財事件」と呼ばれる方法が普通でした。

管財事件では負債総額によって、地方裁判所に収める「予納金」が定められており、

最小規模は、[負債総額5,000万円以下]で、
[法人の破産の予納金=70万円]と[代表者個人の予納金=50万円]、つまり[合計120万円]

かかることになっています。

この運用は高額で時間がかかるために、より簡易な【少額管財】という運用方法が東京地裁によって開発されました。

【少額管財】での予納金は「法人と代表者個人をセットで20万円程度」と安く(東京地裁の場合)、簡易な運用で時間がかからないために、小規模零細企業の倒産処理としては最も望ましい方法であると当事務所は考えています。

しかし、小規模零細企業のすべての法人の破産が少額管財を適用されるわけではありません。

では、小額管財を実現するための要件とはどのようなものなのでしょうか。

 

要件① 少額管財の運用を採用している地方裁判所に申し立てる

まず少額管財は、「すべての地裁で運用されている訳ではない」という点が挙げられます。
つまり、少額管財を採用していない地裁には申し立てること自体ができないのです。

では、地裁が少額管財を採用していない地域の方が、少額管財で処理したい場合はどうすればよいのでしょうか。

少額管財の運用がない地方ではどうしたらいいか

それは少額管財での運用に積極的な東京地裁に申立てることです。

しかし、地方の案件を東京地裁に申し立てるには、いくつかの条件があってそう簡単なことではありません。

その条件の一つは、

債権者にその地方の事業者が多く含まれていないこと

です。

なぜなら、東京地裁で申し立てる場合、債権者集会は東京で開かれますので、そのために債権者に上京してもらうリスクを負わせないようにする配慮があるからです。

特に「個人事業者」が含まれていると適用されないようで、「地元の地方裁判所で申し立てしなさい」と指導されるようです。

そうならないためには、申立て代理人弁護士による申立て前処理が重要になってきます。

【申立て前処理】にて、その地方の個人事業者への支払いを完了しておいて、債権者一覧に載せない状態にしておくというやり方があるのです。

しかし、それは偏頗弁済に抵触し【詐害行為】とみなされる恐れがありますので注意が必要です。

それを回避するための方法はないことはないのですが、ここに記すことはできませんので、一度後相談にお越しいただければと思います。

 

要件② 運用を熟知した申立て代理人弁護士による申立て

少額管財での破産申し立てをする際、申立て代理人弁護士が申立てをすることが必要です。

また、その弁護士が少額管財の運用を承知していることがこの要件には含まれているようです。

 

要件③ 申立て前処理ができていること

さらに、申立て前処理】が適切にできているか、というさらなるハードルがあります。

【申立て前処理】について簡単にご説明すると、このような内容です(詳しくはリンク先ページをご参照ください)。

破産管財人にとって簡易な処理ができる状態での申立て

少額管財は、破産管財人がつく運用です。
破産管財人は地裁が任命しますが、その費用は破産者が納めた予納金から支払われることになります。

つまり、破産管財人である弁護士が、20万円程度の費用でできるような簡易な作業内容になっているかどうかが最大のポイントなのです。

この破産管財人の作用内容を簡易にするための作業が、申立て代理人弁護士による【申立て前処理】なのです。

具体的には、[不動産の処分]、[在庫の処分]、さらに[事業所の撤去]などがあります(これ以上のご説明することはここでは難しいので、当事務所に一度相談に来ていただければ詳しくお伝えします)。

少額管財での申し立て後に、破産管財人がやるべき作業量が多いと判断されると、地裁の方針として予納金の額が30万円になったり50万円になったりすることがあるようです。

それらの申立て前処理を確実に完了させるために、[事業停止]ののち、かなりの時間がかかる場合があります。
(わたしが見たケースでは、事業停止後、半年近くかかったことがありました)

さらに、破産管財人による作業量がかなりあると判断されると「少額管財では受け付けられないので”管財事件”として申し立てなさい」と指導されてしまうようです。

そうなると、残念ながら予納金はぐんと増えてしまいます。
(通常の「管財事件」の場合の予納金額は 【法人の破産・管財事件とは <一> 費用】をご参照ください)

要は、少額管財の運用を実現するためには、【申立て前処理】を確実に実行し、破産管財人の作業量を減らさなければならないのです。

 

「少額管財」と「管財事件」の費用の比較

ここまでご説明したことを、「費用の合計」という点で比較すると以下のようになります。

●管財事件の場合
「管財事件」の予納金 + 並みの申立て代理人弁護士を雇う費用


●少額管財の場合
「少額管財」の予納金 +「申立て前処理」を確実に行える申立て代理人弁護士を雇う費用

トータルでは後者の方がはるかに安くつきます。

もちろん当事務所では、「申立て前処理」を確実に行える弁護士をご紹介することが可能ですので、申立て代理人弁護士をお探しの方はぜひ一度ご相談いただければと思います。

また下記ページもご参照ください。

[ 倒産の費用(弁護士費用)について ]

[ 弁護士のご紹介について]

(初出:2013年8月1日、最終修正:2021年2月5日)

関連記事:

  1. 法人の破産における【少額管財】とは何か〜そのメリットと注意点
  2. 少額管財を実現するための【申立て前処理】について
  3. 破産管財人と申立代理人 その役割
  4. 東京地裁の少額管財は一律[20万円]ではなくなった

経営相談お申込み・お問い合わせ

03-5337-4057
24時間365日いつでも受付