倒産の実態
2021年08月14日

倒産しないという選択

倒産状態にあっても、倒産しないという方法を選ぶことができるか。

原理的にはできる。

事業としての採算性が維持できていればという前提は欠かせないが、債務を支払わない(返済しない)で、事業を続ける方法である。

では、債務を支払わないとどのようなことが起こるか。

金融機関からの借り入れの場合は、[金銭消費貸借契約書]という契約によって債務責任がはっきり決められている。
不動産などに抵当権の設定があれば、その抵当権が実行される(競売に付される)。連帯保証人が設定されていれば連帯保証人が請求される。

その連帯保証人に不動産があれば差し押さえられるだろうし、給与などの定期収入があればそれも差し押さえられる可能性がある。
しかしそれらがなければ請求は受けるが、金融機関は何もできないだろう。

商工ローンなどはきつい追い込みをするし、マチ金、ヤミ金だと仕事ができないくらいの追い込みになろう。
それ以上にかれらは何らかの保全(抵当権や連帯保証人や売掛債権の譲渡など)をしているだろうから、それが実行されると思われる。

買掛金などの営業上の債務があれば、もう仕事はしてくれないだろうし、その残債は請求を受けることになる。
この手の債務は代表者が連帯保証をしていることはほとんどないので、代表者が追われることはないだろうが、裁判を起こされることはあり得るし、売掛先に債権譲渡を求められることもあろう。

ローンやリースは、払えなくなればまずその物件をもっていってしまううえ、連帯保証人が請求されることになる。

光熱費や電話代などの一般管理費は、払えなくなれば止められてしまううえに残債分は請求を受けることになる。

税金と社会保険の債務があれば、これは優先債権なので強制執行を受けることになる。
売掛金の差し押さえや、会社の財産(賃貸の事務所であれば保証金など)の差し押さえなどである。

などなど、これらの債務と戦いながら事業を続けていくことは、原理的にはできるとは言える。
実際、そうしたことを専業としているコンサルタントもいらっしゃるようだ。

だが果たして、それほどまでの戦いをしながら続けなければならないほどの価値が事業にあるか、という疑問がわたしには大きい。

少なくとも、神経的に相当にタフでなければ対応はできないだろうし、わたしが勧めたりしたことはほとんどない。

しかし、現実的にはこのようなことが起こるのだが、それは連帯保証人をしてくれた第三者がどうしても破綻を許さない、というような〝人間関係〝がその裏にあることや、所有不動産を競売で失いたくない、というような〝財産問題〝がその根にあることが多い。

だが、そのような理由で倒産しないでがんばっても売上減や利益減でいずれ破綻を迎えることになることが多く、その段階での悲惨さは目を覆いたくなるようなものだ。

わたしが、このようなことを勧める可能性があるとしたら、債務が金融機関だけ(それも銀行、信金、信組、農協などの真っ当な金融機関)の場合で、不動産などの抵当権設定がなく、代表者の連帯保証(不動産などの財産もない)だけのケースだけだろう。

経営者であっても、人間的な生き方ができなくなったら、直ちに方向転換することが何よりも大切だ、とわたしは思っている。
そのためには、倒産を回避して現状維持を保つよりも、破綻処理(法人の破産や任意整理と経営者個人の破産)はとても役に立つとも思っている。

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