倒産の実態
2022年06月14日

倒産の仕方(倒産の手続き)

経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。

「倒産」とはどういう状態か

倒産とは、
「会社が資金不足の状態になり、事業が継続できなくなること」を言います。
その状態は必然的に、「債権者」が発生することになります。

具体的には、労働債権(社員や従業員の給与など)、税金・社会保険、買掛金(仕入先や外注先)、金融債権(金融機関からの借入金、など)、一般管理費(家賃などの賃借料、光熱水費、など)、等です。

これらの債権者は会社に債権を請求してきますが、
会社は資金不足なのですべては支払えません。
おのずと事業は停止せざるを得なくなり、この状態が「倒産状態」です。

倒産状態を解決するには3つの方法があります

対応姿勢-08

倒産状態を解決する方法は、
会社の資産を換金して、債務に充てることです。

会社の債務を経営者個人が連帯保証していない限り、
全額あるいはすべての債権者に支払えないため、
債権者は満足しません。
(もちろん連帯保証している経営者個人も支払えない場合もあります)

倒産処理におけるもっとも困難な点は、
すべての債権者を満足させることができない状態をどう決着させるか、にあると言えるでしょう。

更なる問題として、倒産すると会社はなくなってしまうので、
会社のあった事業所なども一切なくさなければなりません。

つまり、
会社のなした契約の一切を解約解除破棄しなければならなくなるのです。

この倒産状態を処理する方法は三つあります。

  1. 法律に則って[法人の破産]処理をする。
  2. 法に拠らず[任意整理(私的処理)]をする。
  3. 一切を放棄して[放置逃亡]する。

今日はこの3つの処理方法の特徴について解説していきます。

法人の破産手続き

[法人の破産]には、申し立て代理人である弁護士が必要

まず、[申立て代理人]になってもらえる弁護士を探して委任します。
弁護士に委任しないでひとりでやることは現実的ではありません。
(地裁に相談に行っても弁護士を雇いなさいとアドバイスされます)。

金融機関との交渉は、代理権を持っている弁護士でなければ金融機関が応じません。
弁護士を雇ってほしいと言われますので、どうしても弁護士が必要になります。

申立て代理人は、すべての債権者に連絡し、対応もすべてやってくれますので、
倒産の当事者としては大きなストレスから解放されることになります。

弁護士費用

この申立て代理人の弁護士費用は、倒産の規模や申立て前処理の領域にもよりますが、有能な弁護士であれば100万円以上はかかるでしょう。

安くやってくれる弁護士のいるようですが、そのような弁護士の場合は、単に地裁への申し立ての手続きを行うだけで、申立て前の(倒産者に有利になるような)複雑な対応は期待できないことがほとんどです。

裁判所費用

法人の破産は法的手続きですので、裁判所に納める[予納金]が必要になります。

予納金とは、裁判所に任命される[破産管財人]の費用であると考えていいでしょう。
(破産管財人の費用が別途発生することはありません)

最低費用は[少額管財]の20万円(案件の内容によっては少し増額もありえますが、50万円まではかからないでしょう)で、法人と代表者個人の破産をワンセットで処理してくれます。

※「少額管財」とは
裁判所から選ばれる「破産管財人」の業務を省力化するために、弁護士の調査に基づく手続きのこと。
通常の「管財事件」よりも裁判所に支払う費用が「少額」で、抑えられるメリットがあります。(負債総額の大小ではありません)

管財事件と呼ばれる負債総額別の予納金一覧も地裁から発表されています。
(最小単位は、負債総額5,000万円未満で法人が70万円、代表者個人が50万円で合計120万円)が、小規模零細企業の破産処理の場合は、少額管財で運用していただけるように導くことができる弁護士に委任しなければななりません。

地裁に申し立て後

破産管財人の管理下で調査

地裁に申立てしたら、破産管財人が出てきて会社の財産を換金し、債務に応じて配当することになる。(破産管財人が任命されるまでは、申立て代理人の弁護士がこれを行うこともある=申立て前処理と言います)

申立て後は破産管財人の管理下で債権債務が調査されます。
破産管財人の事務所(弁護士事務所)に呼ばれます。
余談ですが、その時に同行してくれない申立て代理人もいるそうです。

また、破産を処理した経験がない弁護士も多く、そうした弁護士に委任すると費用も高く時間もかかるのでお勧めできません。
当事務所が紹介している弁護士の場合はそのようなことはありませんので、ご安心ください。

全ての手続き終了まで

小規模零細企業の倒産の場合は配当されることはめったにないのが現実です。
最後の段階は地裁で債権者集会が行われ、債権者から異議がなければすべての手続きが終了します。
この間、東京地裁の場合では二~五ヶ月というところだろう。
代表者個人が自己破産した場合、[免責]決定が出れば(法人=会社は消滅してしまうので免責はない)、
”一般人”に戻ることができます。

「任意整理」の手続き

任意整理とは

任意整理による処理は、裁判所の手続きがないので予納金も不要で、破産管財人も。
まず、[代理人]になってもらえる弁護士を探してきて委任します。

この代理人が法人の破産における破産管財人と同様のことを行います。
倒産の任意整理は、経験がない並の弁護士では到底できる領域ではありません。

弁護士費用

この費用はやはり倒産の規模にもよりますが、破産よりはやや高く150万円以上はかかるでしょう。

任意整理のメリット・デメリット

代理人は、[介入通知]をすべての債権者に出し、その対応もすべてやってくれますが、法的処理ではないので強制力がないのがつらいところです。
倒産の当事者としては破産のようにストレスから完全に開放されることはないのが普通です。

弁護士は、倒産処置の代理人として法人の破産と同様に債権調査を行い、会社の財産を換金し、債務に応じて配当します。

任意整理が可能なケースは、債権者が少なくかつ処理に協力的な場合ですので、可能性は多くないと考えた方がいいでしょう。

この任意整理は法的処理ではないので、債権者一律の配当でなければならないということはなく、ある債権者は10%で、またある債権者は5%ということも、債権者から異議がなければ可能です。
小規模零細企業の倒産の場合は、法人の破産と同様に配当されることはめったにないのが現実だ。

「法的な破産処理」と異なり、裁判所の手続きではありませんので、強制力のある債権者集会が行われ、異議がなければすべての手続きが終了する、というわけにはいかないのです。

配当額(50%であれ1%であれゼロであれ)に債権者が納得していただければいいのですが、
そうでないと紛糾するとともありえます。
紛糾すると、改めて裁判所に申立てをして[法人の破産]処理に移行することも多くあります。

債権者の意向に左右されるので数ヶ月から数年かかることもあります。
最終的に債権者が納得して、協定書がつくられれば終結します。

[放置逃亡]の手続き

倒産処理の一切を放棄するだけです。費用も一切かからりません。
ただ、そのまま放置した状態では、債権者が納得しませんから、督促が続き、なかなか社会復帰できないことが多いようです。
特定債権者に一部支払いをして社会復帰を果たすというようなことがありますが、任意整理とあまり変わりありません。

倒産後の社会復帰

倒産後、経営者の社会復帰は処理方法によって異なると言えるでしょう。

・法律に則って[法人の破産]処理をした場合。
これは、何の憂いもなく正々堂々社会復帰できます。胸を張ることはできないが下を向くこともなく生きていける、といえるでしょう。

・法に拠らず[任意整理(私的処理)]をした場合。
裁判所が認めた処理ではないので、法人の破産に準ずることになる。胸を張ることはできない上に、ある種の債権者の前では下を向いたままでいるしかない、と言うことになります。

・一切を放棄して[放置逃亡]した場合。
残念ながら債権者が近くにいる環境では社会復帰は難しいと言わざるをえません。事業上の債務の時効は最長で十年ですが、その後も胸も張りにくく、上を向けない状態が続くでしょう。

以上のように、倒産が避けられないならば、
法的な倒産処理=破産処理をした方がメリットが大きいのです。

法人が破産をしたから、経営者個人が破産したからといって、二度と復帰できないわけではないのです。
早め早めに対処することで、ダメージをより最小化し、また再起しやすくなるのです。

(初出:2015年3月23日 修正:2021年1月25日)

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