倒産の実態
2021年08月01日

破産しても代表取締役になれるのか

経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。

経営危機に陥った経営者が大変気にされるテーマ【破産しても代表取締役になれるのか】について解説します。

会社が倒産したら二度と社長にはなれないのか?


経営が立ち行かなくなると、経営者は少なからず「倒産」を意識するものです。

そして「もし倒産したら、事業は、社長の自分は、家族は、一体どうなるのか?」といろいろ想像をめぐらせ不安にかられることが多いのです。

その想像の中で、会社が倒産し、その代表取締役だった社長が個人破産(自己破産)したら、もう二度と社長になれないと思い込んでいる方は大変に多いのです。

「倒産」という、経験のない、かつ一般的にはネガティブな事象ですから、悪い方に考えてしまうのは仕方のないことですが、決してそのようなことはありません。

つまり、自己倒産しても代表取締役になれますのでご安心ください。

実は、2005年に改正された「新会社法」以前は、破産すると取締役の「欠格事由」となり、免責にならなければ代表取締役はおろか単なる取締役にもなれなかったのは事実でした。

しかし、2005年の改正によりそのようなことはなくなりました。

「新会社法」では、破産の申し立てから復権するまで(免責まで)の間の「欠格事由」がなくなったので、免責による復権を得ていない者でも、取締役はもちろん代表取締役にもなることができるようになったのです。

代表取締役になるためには「選任」が必要


しかし、取締役が自己破産をした場合には、「民法」の規定により「取締役との委任契約は終了し、当該取締役は自動的に退任することになる」というシバリは残っているので、自己破産してしまうとそのまま取締役(もちろん代表取締役も)で居続けることは民法上はできません。

ただし、改めて代表取締役として選任することは妨げられてはいません。

つまり、民法上は自動的に退任せざるを得ないのですが、その後に改めて選任すればまた取締役(や代表取締役)になれるのです。

が、一つ注意すべきことがあります。

それは、もし倒産会社以外の会社の代表取締役や取締役だった場合は、「退任した旨」と「選任した旨」の役員変更の商業登記はしなければならないという、手続き上の制約はあることです。

登記の手続きは、司法書士に依頼すればしてもらえます。

※どうかネット上にあふれている“古い情報”に惑わされないでください。
この改正は2005年(今からもう15年以上前)ですが、ネットにはその前の古い情報(つまり自己破産すると代表取締役になれない)があふれています。

またこの事案に限らず、商法や会社法はよく改正されるので、常に最新の情報に接していただきたいと思います。

倒産前に”第二会社”を作る場合は注意が必要


このような事実は、倒産前に(倒産後でも)に”第二会社”を作って、その取締役に(もちろん代表取締役にも)なることも、制度上は認められたたことになります。

ただし、そのことが倒産する会社の破産手続きの中で、不利益を招きかねないケースもあるのです。

実は、倒産前に第二会社を作って事業を移行するような場合は、今回の問題を含めいくつかデリケートな問題が絡むので、そのような構想がおありの方は一度当事務所に相談に来ていただくをお勧めします。

その事実を知らずにうっかり新会社の代表者になってしまい、旧会社の倒産処理に際してトラブルになるケースは大変多いので、”あとの祭り”とならないようぜひとも当事務所にご相談いただければと思います。

※余談ですが、2005年改正の新会社法では、会計監査人を置かない小規模零細企業の場合は、代表取締役以外の取締役も監査役も置く必要はなくなったので、きわめて小規模で会社の設立ができるようになったことも付記します。

(初出:2016年3月4日、最新修正:2021年1月20日)

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