倒産の実態
2022年03月21日

倒産の予備軍 - 欠損法人 【改定】

国税庁の発表によると、平成元年からのデータは以下;

利益計上法人数  欠損法人数   (合計数) 欠損法人割合
平成元年   988,973    974,001  1,962,026   49.6%
平成10年   820,302   1,688,550  2,508,852   67.3%
平成20年   740,533   1,856,575  2,597,108   71.5%
平成30年  1,032,670   1,692,623  2,726,296   62.1%
令和元年   1,054,080   1,691,357  2,745,437   61.6%
※ 欠損法人とは、利益が上げられず納税できない法人を指す。

三社に二社は欠損法人。
この欠損法人の中には、家族など身内に給与を支払って意図的に欠損にしているような、利益の操作をしている法人が多くあるといわれている(その数、比率は一切不明である)。

しかし、解せない点がいくつかある。

このように納税ができない欠損法人は、金融機関の融資が受けられないのが一般的なので、上のような利益操作をしている会社でも、融資を必要としていない会社でなければこの欠損法人にはなれないことになる。
融資を必要としない会社はいったいどのくらいいるのだろうか。

この欠損法人は、決算をして税務署に報告をしているわけで、そうなるとこの欠損法人の決算書と納税の申告をしている税理士が、この欠損法人分だけいることになる。
むろん、税理士を介在させない会社もあることは理解しているが…。
これは税理士報酬は払えるが、納税はできない、ということになる。

税理士会はこのことを認識しているのだろうか。
これらの欠損法人のことを、地域の商工団体(法人会、商工会や商工会議所など)は把握しているのだろうか。

全法人の三分の二が欠損法人なのだから、放置していてはいけないと思うのだ。
すくなくとも、指導の対象になると思うのだが、実情はいったいどうなっているのだろうか。

この欠損法人のかなりの部分が倒産の予備軍であることは間違いないと思うのだが、実態はわたしにもよくわかっていない。

[利益計上法人]の約30%は【安定経営】段階としていいだろうし、[廃業企業数]の約6%は【倒産企業】だ。
そしてその中間に位置する約60%の[欠損法人]は、【経営不安】もしくは【経営危機】状態と位置づけられる。

わたしはこの段階を[不安定経営危機状態]と名付けている。
おそらく、この[不安定経営危機状態]のなかで上に登ったり(少しは納税できるようになったり)、下に降りたり(また納税できなくなったり)していることだろう。
大きくよくなれば【安定経営】に上がれるが、大きく悪くなれば【倒産企業】になってしまう。

わたしはこの全法人の約60%の[欠損法人]は、倒産予備軍とみなしている。
60%ということは、三社のうち二社ほどにあたる。なんと大きな予備軍だろうか。

欠損法人の実態はよくわかっていない。
なにせ170万社もあるし、業種も規模もエリアも違うので一概には導き出せない。

おそらくは、
・[シクミ(事業モデル)]
・[ヒト(人材)]
・[カネ(資金)]
の問題を抱え、それらの問題がリカバリーできれば少し上に登り、また新たな問題が発生すれば下に降りてくのだろう。
今まで不安定経営危機状態の依頼人たちとの面談で、そう判断できる。
わたしはこれらが倒産の[間接的要因]とみなしている。

そしてリカバリーできなくなる[直接的要因]は、[カネ(資金)]問題となる。
カネの問題は、何回かリカバリーできても最終的にはリカバリーできなくなることが多く、それがほとんどの場合倒産に結びついてしまうのだ。

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