倒産の実態
2022年01月03日

計画倒産、偏頗弁済、詐害行為、の疑問

今日は、倒産に際して、最も多くの不安を持たれる3つのキーワードは以下の三つ。

計画倒産

偏頗弁済(へんぱべんさい)

詐害行為

当事務所に相談されるケースでも、最も多い。

[計画倒産][偏頗弁済][詐害行為]には、運用上のガイドラインがない

倒産処理の大原則に、
「倒産時の会社の財産は債権者に均等に配当されなければならない」
というものがある。

これらのキーワード、[計画倒産(けいかくとうさん)]、[偏頗弁済(へんぱべんさい)]、[詐害行為(さがいこうい)]は、
その“均等な配当に反する“のではないか?という疑問がもたれる。

実はこの3つには、運用上の“ガイドライン”が明確には存在していない。

このため、当事者が混乱するのものだ。

「倒産の意思決定をした」後では問題になる


ただ、はっきりしているのは、これらの行為が問題になるのは“倒産の意思決定”をした後でのことだ。

単に時系列上で、
“倒産の前に行われた”というだけでは、“均等な配当に反する”とは言えない。
不渡り手形を食って連鎖倒産になるようなケースでは、今日不渡りが出て、今日倒産に至るということもありえる。
その場合には、昨日支払ったことが偏頗弁済になるか?とい言うと、そんなことにはならない。

なぜならば、昨日の支払い時には倒産するとは思ってもいなかったから。

そもそも倒産とは、資金不足で債務を残して事業継続ができなくなること。
倒産の最終的な意思決定は、おおよそ“資金不足”になった時だ。資金調達ができなくなって、はじめて倒産という事態が現実のものになるのだ。

その事態は三か月前のこともあるし、一日前のこともある。
もちろんケースバイケース。直前まで倒産のことは考えてもいなかった、というようなケースもある。

倒産の意思決定後は制限される行為

「倒産をすることに決めた」=「倒産の意思決定」の後に行われることは、当然制限され、
具体的には以下のようが該当する。

新たに仕入れを起こして転売する。
在庫品を売却する。
経営者の会社への貸し付けを取り崩す。
特定の借入(特に恩借)の返済を行う。
特定の買掛先だけ支払う。
クレジットカードでキャッシングや物を買う
等だ。

これらは、「計画倒産」と言われることが多い。
現実的には[計画倒産罪]というものは存在しないが、あえて探せば[詐欺]に該当する。また、風評として倒産者に重くのしかかる。

破産管財人がついている法的処理では、
「偏頗弁済」と呼ばれ、「詐害行為」と認定されば、
詐害行為取消権の行使によって返却を余儀なくされることもある。

ですが、繰り返しになるが、これらはすべて、“倒産の意思決定の後”に行われたことが対象になるのだ。

倒産せざるを得ないと思った(=意思決定)のは“何時(いつ)”なのか?がポイント。

「その後」ではできないこと(やってはいけないこと)はあるが、
「その前」なら偏頗弁済や詐害行為には抵触しない、と思われる。

現に、破産申立書にその旨を明記し、説明をしたところ、直前の支払いや返済を認めてくださった破産管財人は何人もいらっしゃった。

多くの弁護士は、倒産処理の経験不足

ところが、申し立てる側の弁護士が、直前に行われたそれらの行為を、認めないようなケースが多いのだ。
弁護士に相談に行かれた方からそういうお声をよく伺う。

・倒産するべきかどうか、相談に行ったのに、「一切の支払いや返済はしてはいけない」と言われた。
・事業継承を相談しに行ったのに、「倒産以外の選択肢はないので、資金は動かさないように」と言われた。

つまり、弁護士に相談に行った日を、[倒産の意思決定の日]とみなし、それ以前に行った行為を「計画倒産」「偏波弁済」「詐害行為」と判断されてしまうのだ。

倒産は、それ自体は犯罪ではなく、地裁は運用(処理)するだけなのだ。
犯罪事件と異なり、運用経過が“判例として公表されることはない”ので、弁護士でも申立て代理人の経験量が少ないと、現実の運用を知らないのだ。

ですので、申立て代理人の弁護士として、破産管財人(これも弁護士)と対峙する際に、詐害行為を指摘されるリスクを負いたくないのだ。

依頼人の利益を最大化する対応


当事務所は、相談に来られた方の利益を最大化する(不利益に陥らないようにする)ために、

これまでに、

・店舗や事業所をリースバックなどの手法で確保して、倒産後も事業が継続できた。
・偏頗弁済に抵触することなく、返済ができた。
・事前に相談した弁護士には、詐害行為だと指摘を受けたが、問題なかった。
・倒産後、時効までつつがなく過ごすことができた
・数千万円の再起費用を確保して倒産処理ができた

等、合法的に実現できた方がたくさんいる。
これらは、不可能なことではありません。

申立て代理人の弁護士の紹介をご希望される場合は、依頼人に最大限の配慮ができる先生を紹介することができるので、安心してご相談いただきたい。

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