【計画倒産】と【計画的倒産】について
経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。
経営危機に陥った経営者からのご質問が非常に多い【計画倒産】について、2回に分けて解説します。
(1)【計画倒産】と【計画的倒産】について(今回の記事)
(2)【計画倒産】は犯罪なのか
・いったい【計画倒産】と【計画的倒産】は何がどう違うのでしょうか?
・何が問題になるのでしょうか?
①【計画倒産】とは何か
【計画倒産】という言葉を、よくお聞きになるかと思います。
これはどのような意味なのでしょうか。
弁護士などに確認すると、
計画的に詐取しようという意思を持って会社を設立して倒産を迎えること
と定義され、それは【詐欺】であり【犯罪】だ、といわれるようです。
一般的には、
会社の設立後、その会社が買掛け(仕入れ)をして、その買掛商品を換金して倒産する
というような手口のことです。
しかしながら、刑法に【計画倒産罪】という罪状はなく、【計画倒産】自体は法律用語ではないようです。
②【計画倒産】と【計画<的>倒産】の違い
まれに、上記のように犯罪を志向して会社を設立する例はあると思いますが、健全な経営者であればまっとうに事業をしようと会社を設立するもの(つまり倒産を意識して会社を設立するものではない)と断言できます。
しかし、
もし事業が悪化して倒産が避けられないような段階に至った場合、
・会社にある現預金を、優先的に処理したい債務に充てる
・会社の資産を換金して、優先的に処理したい債務に充てる
など、
ある程度の計画を持ってその倒産の事態を迎えることは、経営者としてごく当然の判断です。
それは
犯罪としての【計画倒産】ではなく、経営者の健全な判断による【計画<的>倒産】と言うべきではないでしょうか。
経営者としては、社員の給与などの労働債権を残したまま、あるいは外注や下請け会社が連鎖倒産する可能性が高い状況で、自社の倒産の事態を迎えることは、どうしても避けたいことですし、それは当たり前の判断です。
③【計画<的>倒産】の問題点〜【詐害行為】と【偏頗弁済】
ただし、この【計画<的>倒産】を進めるにあたり、避けられない倒産を目前にして、
・借入れをしてそれを隠蔽する
・仕入れをしてそれを換金して隠蔽する
ことは、禁じられた行為です。
これはいわゆる
【詐害行為(さがいこうい)】と呼ばれるものです。
さらに、避けられない倒産を目前にして、
・特定の借入先に返済する
・特定の買掛先に支払いをする
ことも、禁じられた行為と言われます。
これはいわゆる
【偏頗弁済(へんぱべんさい)】というものです。
ちなみに
【詐害行為】も【偏頗弁済】も、それが発見された段階で処罰されるという性質のものではありませんが、破産申立後に破産管財人によって否認された場合、返還を求められることがあります。
また、
申立て代理人となる弁護士には、「【詐害行為】や【偏頗弁済】があると受任できません」と言われることがあるようです。
しかしながら、倒産直前に借入れを起こしても、その借入金の使途が認められれば(あるいはほとんどが会社に残っていれば)それは問題にはなりません。
また、仕入れの買掛金が残ったとしても、仕入れた品物が転売されたりしていなければ、それも問題になりません。
④【計画<的>倒産】の問題点〜倒産と回避の分岐点の見極めは非常に難しい
そもそも「避けられない倒産」を予感した場合、手をこまねいたままただちに破産手続きに入ることの方が不自然というものです。
まして、その前段階の「経営危機状態」にあって、気になる債務に対処しておこうと考えるのは、経営者として健全な判断です。
そして、
・避けられない倒産の事態
・その前段階の経営危機状態
といった段階では、経営者は倒産を回避するために、さまざまな手段で資金調達を図るものですが、多くの倒産は、その資金調達ができなくてやむを得ない形で倒産の事態に至るものだ」ということはご理解いただけましょう。
実は経営危機の段階で、
・資金調達をすれば倒産が回避できるか否か(資金調達で事業継続できるか)の判断
は、もっとも重要な経営危機のポイントなのですが、
多くの経営者が、この判断を誤って悲劇的な倒産を迎えているのを、わたしは多くの相談対応の現場で見聞しています。
⑤【詐害行為】と判断されずに資金活用することは可能
わたしが知る、倒産事案を多くこなしている有能な弁護士は、避けられない倒産が予知された段階からは、【詐害行為】にならないぎりぎりのところで最後に残った資金の有効な活用使途をアドバイスすることが可能です。
もちろんわたし自身も、この部分のアドバイスは欠かせない対応の一つであり、申立て代理人の弁護士に万が一イヤな顔をされても、できる限りその可能性を追求します。
要は、”見逃しの三振”は絶対にしたくないのです。
もし破産申立後に、破産管財人に否認されたら、その部分だけ返却すればいい場合がほとんどなのですから。
経営者であれば、優先債権の【税金や社会保険】と【労働債権(給与などの人件費)】の、いったいどちらを優先するかはいうまでもないでしょう。
もちろん、労働債権を確保する手立てをしたうえで、倒産の処理に入らなければなりません。
そのためには、会社にある財産をどうするかについての綿密な計画と作業が必要になり、自ずと一定の時間が必要です。
そうでなければ、
・社員の労働債権が守りづらくなるし
・恩のある借入れの返済ができなくなるし
・小規模零細企業の連鎖倒産を止めることはできない
からです。
そしてそれは決して【計画倒産】ではないと、倒産経験のあるわたしは考えます。
それは単に、「経営危機の最後の段階(倒産の意思決定の直前の段階)」を【計画的に】進めただけだからです。
つまり現実問題として、【計画倒産】かどうかを意識することが重要なのではなく、【詐害行為】や【偏頗弁済】にならないように意識して処理を進めることが重要なのです。
⑥【計画的倒産】では、弁護士選びが最大のポイント
それは、とりもなおさず申立て代理人の弁護士と破産管財人のせめぎあいということになります。
破産管財人に対して、依頼人を守ってくれる申立て代理人の弁護士でなければ経営者は浮かばれませんが、実はそのようにして小規模零細企業の立場に立って戦ってくれる弁護士は非常に少ないのが現実です。
そして、それを実現するためには、針の穴に糸を通すような緻密なチェックを経なければならないことがほとんどです。
例えば、
・時間的な問題
・金額的な問題
・名目的な問題
などを、十分な経験を持った申立代理人弁護士が精査する必要があるのです。
⑦それでも債権者に「計画倒産だ」と言われることはある
ただし倒産という事態を迎えると、債権者に「それは、計画倒産だ」と言われることは、どうしてもあります。
債権者にしてみれば、
・事前に知らされることもなく(事前に知らせるとどうしても混乱が起こるので、知らせることはできません)、
・予兆も感じていなかった(そうした予兆も感じさせてはなりません)
のですから、計画倒産と言われてしまうものなのですが、こればかりは致し方ありません。
⑧申立代理人弁護士にとって、実はたいへんデリケートな問題
今回解説いたしました【計画的倒産】をはじめ、【詐害行為】や【偏頗弁済】に関する経営者からのご質問やお問合せはたいへんに多いものです。
それだけ切羽詰まった経営者にとっては切実な問題と言えましょう。
一方これらの問題は、
破産の申立て代理人の弁護士にとっては、たいへんデリケートな要素をはらんでいるのも事実です。
つまり、申立て代理人にとっては、この【計画的倒産や詐害行為、偏頗弁済】に抵触しそうな案件は、
非合法なことではないものの、
・破産管財人とやりあう局面も想定でき、
・場合によっては弁護士自身への【懲戒請求問題】にも及びかねない
面があるからなのです。
ですから、経営者の皆さんがせっかく自力で探した「倒産問題に強そうな弁護士」であっても、初対面の場合、とうてい真正面からは取り合ってくれないテーマであることに注意すべきです。
そして、この問題に関しては、申立て代理人の弁護士や破産管財人から情報が出てくることはないでしょうし、「こうすればうまくいく」といった情報もおそらくはネット上には皆無と思われます。
申立代理人弁護士にとっては、そのようなデリケートなテーマであることはどうかご理解いただきたいと思います。
⑨当事務所は【計画的倒産】にいかに対応しているか
本記事をご覧になり、「ご自分が現在考えていることが【計画倒産】に該当するかどうか」をお知りになりたければ、ぜひ時間がある段階で一度、当事務所にご相談にお越しいただければと思います。
お話を伺った後、かなり明確にそのガイドラインを示すことができると思います。
当事務所が関わった940件を超える案件は、可能な限り【詐害行為】や【偏頗弁済】を回避してきましたし、【計画倒産】だと破産管財人に指摘されたことは一度もありませんのでご安心ください。
当事務所は、【相談に来られた方の利益を最大化する(不利益に陥らないようにする)こと】【倒産後も経営者に再起・再建の道を見出していただくこと】を最も重視しています。
いままで、
・店舗や事業所をリースバックなどの手法で確保して、倒産後も事業が継続できたケース
・偏頗弁済に抵触しそうだったが、抵触することなくクリアできたケース
・以前相談した弁護士に「詐害行為だ」と指摘されていたが、クリアできたケース
・数千万円の再起費用を確保して倒産処理を終わらせたケース
などを、合法的に実現できた方がたくさんいらっしゃいます。
これらは、たいへん綿密な計画を立てて実現しなければならないことですが、決して不可能なことではありません。
また、申立て代理人の弁護士のご紹介をご希望でしたら、上に述べたような配慮ができる弁護士の先生にお願いするようにしています。
そのような弁護士は実は圧倒的に少ないのですが、当事務所にご相談に来ていただければ、多くの場合お力になれると思います。
◆【弁護士(申立て代理人)のご紹介】はこちら
(初出:2014年1月16日、最終修正:2020年12月30日)
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