破産管財人と申立代理人 その役割

経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。

今回は、破産手続きにおいて欠かすことのできない二人の弁護士、【破産管財人弁護士と破産申立代理人弁護士】について解説します。

・破産手続きにはなぜ二人も弁護士が出てくるのでしょうか

・その役割分担はどうなっているのでしょうか

(以下、各々を、「破産管財人」「申立代理人」と呼ぶことにします)

 

破産管財人と申立代理人の大きな違い

大きな違いの一つは「誰が依頼するか」です。

破産管財人=地裁によって選ばれる弁護士

申立代理人=倒産する経営者が選んで委任する弁護士

まず、後者の申立代理人についてご説明しましょう。

倒産すると、倒産会社の社長(代表取締役)は”当事者能力”を失うことになります。
そのため、破産の申立てなどの倒産処理は「代理人」に任せる必要が生じます。

もちろん自社の破産手続きを依頼するのですから、倒産する会社の経営者が代理人を選んで委任することになりますが、その代理人には「代理権」の認められている弁護士しかなることができません。

そして、倒産会社が「法人の破産」を申立てる際の代理人の弁護士は【申立代理人】と呼ばれ、地裁に対して破産申立ての手続きを行います。

一方、【破産管財人】は、倒産会社が「法人の破産」を裁判所に申立ててから、裁判所によって選任されますので、破産申立て時には破産管財人はまだ存在していません。

この破産管財人も弁護士でなければなれません。結果として「手続きに弁護士が二人も出てくる」ことになり、当事者も債権者も混乱することが多いのです。

 
破産管財人と申立代理人 その役割

 

破産管財人はどうやって選ばれるか

先に述べたように、破産管財人は、地方裁判所に破産申立てがあってから設定されるものです。

どのように選ばれるかというと、地裁に対して「破産管財人をやりたい」と届け出をした弁護士から地裁が選ぶことになっています。

ここで注意したいのが、まず破産者と「利害相反」がある弁護士は、破産管財人になることはできないということです。

具体的には、「債権者の顧問」(金融機関の顧問弁護士など)や「債権者の代理人」(債権者企業の顧問弁護士など)は、その案件の破産管財人を担当することはできません

また、そのような利害相反のある弁護士に対して、もし倒産予定の経営者が「申立代理人になってください」とお願いしても受けてもらえないのが原則です。

(しかし、実際には受ける弁護士もいるように聞きます。倒産する経営者には、その事実を知られることはないと判断するからでしょう。仮に、債権者の顧問弁護士が倒産者の申立代理人をやるとどうなるか、考えるだに空恐ろしいことです)

 

申立代理人の役割は破産管財人の役割と重なる

申立代理人は、地裁に対して破産の申立て作業を行うと申し上げましたが、それ以外にも、「破産管財人が設定されるまでの間をつなぐ役割を担う」と理解したほうがよいでしょう。

申立代理人と破産管財人の両方にかかわる作業として、

債権の換金

・売掛債権を集金

・会社の財産の売却

・債権者への債務調査、債務の確定

を挙げることができます。

申立代理人は、破産管財人が決まるまでは、これらの作業を進めるという役割を果たすのです。

具体的には、売掛金の回収や在庫品の売却など、債権(財産)を換金し、優先権のある債務に充てる作業などを担務することになります。

社員の給与や解雇手当、退職金の支給などは「優先債権」ですので、破産管財人が選任される前に申立代理人が行う場合が多いようです。

それは【申立て前処理】と呼ばれ、その処理ができていればいるほど破産管財人が出てきた段階での作業がスムーズにいくことが多いものです。
(実際は、そのような作業をしないで破産管財人が選任されるまで待っている”ゆるい申立代理人”もいるようですが)

このようにして倒産会社の債権や財産を換金したのち、換金できたものについては、債権者に平均に配当しなければなりません。それが倒産処理の原則です。

にもかかわらず、特定の債権者に偏った返済をしてしまうとそれは【偏頗弁済(へんぱべんさい)である】として、破産管財人から否認されその分を返却しなければならなくなってしまいます。

申立代理人はそうした作業をしながら、地裁に選任された破産管財人が決まるのを待ち、破産管財人が決まった段階で作業を引き継ぐことになります。

これらの引継ぎ作業があるため、申立代理人の弁護士は実際に倒産者の利益代表のはずなのですが(倒産者が弁護士費用を支払うのですから当然ですが)、破産管財人にチェックされて「No!(偏頗弁済だ)」と言われないように慎重に振舞うことになります。
(彼らは同業者でもあるわけだし、致し方ないのかもしれませんが…)

 

 

連鎖倒産を避けたいときはどうしたらいいのか

なお、破産管財人の費用は、予納金と会社の財産を換金した中から支払われることになります。

ということは要は、破産者が支払うことになるのですから、倒産者は破産管財人に対して強気に出てもいいようなものですが、破産管財人は地裁から任命されている=いわば半ば公務員的地位を持っているため、なかなかそうはいかないのが実情です。

そのため、先ほども申し上げたように「連鎖倒産を避けるために入金した売掛金を特定の債権者に支払いたい」というような、倒産者が意図したいことことは、原則的にはできません

「連鎖倒産を避けたい」というような倒産者の意図を実現するためには、実は時系列的には申立代理人に委任する前にしなければならないのです。

しかし、それもうまく対応しなければ、破産手続きの中で破産管財人に否認されて返還を求められることもあり得ることは覚えておいていただきたい。

…とはいいながら、こうした手続にはグレーゾーン=裏ワザもあるのです。大変申し訳ありませんがここに詳しく書くことはできません

お知りになりたい方はぜひご相談にお越しいただきたいと思います。

 

任意整理の場合、破産管財人は存在しない

さて、破産手続きではなく、【任意整理(私的処理)】の場合はどうなるのでしょうか。

当然のことですが、裁判所の手続きではありませんので、破産管財人は最後まで存在しないことになます。

よって、任意整理(私的処理)の場合は、法的処理の際に破産管財人が果たすべき作業を、代理人弁護士が行うことになります。

一方、【任意整理(私的処理)】から【法的処理(法人の破産)】に移行する場合には、代理人弁護士は申立代理人となり、破産管財人が選任されるまで、倒産会社の債権(売掛金の回収は最優先の作業)と債務(債務調査はもっとも大事な作業)を整理しなければなりません。

 

申立代理人を選ぶ際は、少額管財を実現できる弁護士を選ぶ

以上、述べてきたことから、

・申立代理人と破産管財人は敵対した存在である

・申立代理人は倒産会社を守る存在である

と思われる向きもあると思いますが、現実は必ずしもそうではありません。

申立代理人は倒産会社が雇うのですから、本来であれば倒産会社の利益を守る立場にあるはずですが、弁護士という職業倫理の面から、必ずしもそうでないことが多いことを申し上げておきます。

弁護士によっては、依頼人である倒産会社の社長を「犯罪者扱い」するようなこともあります(わたしの場合がそうだった)ので、そのような弁護士に委任すべきではありません。

もし経営者自身が申立代理人を自分で探す場合、そもそも弁護士になじみのある人は多くありませんし、その弁護士が破産処理に長けているのかもよく分からないものですから、申立代理人選びは「当たり外れ」が大変に多いのです。

また、法人の破産を志向する場合、小規模零細企業は、裁判所への予納金が少なくて済むなどのメリットが多い【少額管財】を実現すべきであるとわたしは常々申し上げています。

少額管財】についての詳細はこちらをご参照ください。

*少額管財を実現するためにどうしたら良いかは【少額管財を実現するための要件】 をご参照ください。

実は、【少額管財】を実現するためには、申立代理人の経験と腕次第、と言っても過言ではありません。

当事務所は、25年以上940人以上の経営危機相談に対応した実績があり、少額管財を実現できる優秀な申立代理人弁護士をご紹介することも可能です。

もし申立代理人の弁護士をお探しの方は、【弁護士(申立て代理人)の紹介】を参照してください。
もちろん彼らは倒産問題(少額管財含む)の経験豊富で、大変に信頼の置ける弁護士です。
ご安心ください。

 

補足:地方都市の実情〜倒産処理に長けた東京の弁護士をお勧めします

地方都市では弁護士の数が少ないことが多く、よって破産管財人はなかなか決まらないことが多いものです。

わたしが実際に見たケースでは、破産管財人が決まるまで半年以上もかかったことがあるくらいです。

余談ですが、地方都市で金融機関の顧問をやっているのはおおよそその地域のボス弁護士ですから、そのボスは当然のことながら破産管財人にはなれません。

しかし、地方都市では地元の弁護士会の集まり(酒席ですね)で、このボス弁護士と、破産の申立代理人となった若手弁護士が同席することがままあり、そうした席で若手が”つぶされる”ことがよくあると耳にしたことがあります(弁護士の世界はかなり”体育会系”であることは間違いないなさそうです)。

つまり、地方都市で、同じ弁護士会に所属する弁護士どうしが申立代理人や破産管財人となる場合、そうそう対立してくれないどころか、申立代理人と債権者である金融機関の顧問弁護士(ボス弁護士)の力関係を無視することはできず、この状況は倒産会社にはどうしても不利に働くと言わざるを得ません。

そのように考えますと、弁護士の少ない地方都市の倒産のケース(法的処理)では、東京など大都市の「倒産処理に慣れている」弁護士を探して委任したほうがいいと、わたしは思っています。

なぜなら「倒産会社のために働いてくれる」ことが期待できるからです。

もちろん、地方都市の経営者に「倒産処理に慣れている」東京の弁護士をご紹介することも可能ですので、ぜひご相談ください。

(初出:2014年4月2日、最終修正:2021年1月25日)

 

 

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