※ このエントリーは、2012年12月2日に作成したものだが、正確を期するために2017年12月20日に四回目の修正を行った。

一番多いのは経営者が何の処理もしない[放置逃亡]である。
果たしてどれくらいあるか…。
正確なデータはどこにもないが、倒産会社の70~80%はこれだろうといわれている。誰もカウントする人がいないので、倒産数の発表にはまったく現れない部分だ。

会社の財産は、債権者が換金して分配することになる。税金と社会保険、給与などの労働債権(給与などが払われなければ社員も債権者だ)などの優先債権で消えてしまい、一般の(営業上の)債権にまで回らないケースがほとんどだ。
これらのことは、債権者(の代表の世話役)や社員など誰かがやらなければなにも進まなくなる。そういうケースも多い(有力な債権者が弁護士を連れてきて処理してもらうようなこと)。会社の財産の雲散霧消化だ。一般的には早い者勝ちになるため、混乱することが多い。
社員であれ、債権者であれ、会社の器具備品を無断で持っていってしまうことは[窃盗罪]にあたるため、あってはならないことだが、現実にはよく起こり得ることだ。刑事事件になることもあるので、気をつけられたい。
会社という場は、事業所は(賃貸であれば)家賃が払えなくなれば出ざるを得ず、事業所の大家さんが会社の器具備品を処分してしまうことになり、いつの間にかなにもなくなってしまうことになることが多いが、本来は会社が所有者なので勝手に処分はできない(大家さんがどこかに保管するというケースもよくある)。
会社そのものは、郵便物も届かない、電話も架からない、社員も社長もいない、会社のあった場所には看板も何もない。登記簿にはあるのに会社は存在しなくなっている。決算を行わなければそのうち(数年後)自動的に登記も抹消されてしまう。

経営者は(おそらく)連帯債務を抱えて時効まですごすことになる(時効は一般には5年、最大で10年と覚えておこう)。
その間に住民票を移動したりすると、金融機関などはすぐに調べて新たな住所に内容証明などを送ってくるから心臓によくない。…金融機関はこうしたところにしっかりとコストをかけているから金利が高くなるのだ。
わたしは、経営者は個人の(自己)破産をすべきだと思っているのだが、現実にはそれさえしない方が多いようだ。
以前は、財産のまったくない人の破産(経営者であっても)は、[自己廃止]という運用方法で約[2万円]でできたのだが、今は法人と代表者個人の破産(もっとも簡易な形では少額管財。約[20万円])をしなければならないことになっている。

社員は、雇用保険に入っていれば、一定の手続きの後[失業保険]をもらうことになる(倒産は解雇なので失業保険はおおよそ一か月ほど後にはもらえる)。
会社に誰もいなくなって、離職票も発行してもらえないときは、管轄のハローワークに相談することになる。
未払いの給与や退職金は払うべき会社がなくなるので、払われずに終わることが多いが、[独立行政法人労働者健康福祉機構]で立替え払いをしてくれるので、とりあえずは最寄りの[労働基準監督署]にご相談することになる。

金融機関は、会社がなくなってしまうのだから会社の債権は取れなくなる。抵当権があれば実行される。連帯保証人がいればその人が請求される。ここでも、競売や差し押さえなどのことが起こる。それでも届かない部分は金融機関が貸倒損失処理をしておしまい。
担当者は(社長が逃げたことの)責任を取らされ、始末書程度のペナルティはあるだろう。が、まぁ、その程度だ。

買掛金などの一般債権者は、これも会社がなくなってしまうのだから会社の債権は取れなくなる。一般的な商取引では連帯保証をとるようなことはないから、社長を追いかけても(見つけたとしても)社長個人に責任を取らせることはできない。
ちかごろ、この一般債権者の回収が(会社からそういわれているのだろう)、相当きつくなっているようだ。

ローンやリースは、その物件をさっさと持っていってしまい、残ローン(リース)はローン(リース)会社の中で貸倒損失処理をして、それでおしまい。

一般管理費関連(水道光熱費、賃借料、など)は、払うべき会社がなくなってしまうので、それまで。すなわちまったく取れなくなる。

売掛金は、だいたい最後の段階で経営者が回収してしまっている場合が多いものだが、もし残っていても、税務署が差し押さえをしたり、社員が取りにいったり、債権者がとりにいったりして混乱する場合が多く、売掛先は支払いを拒否するケースが多い。
言い分としては、継続的な仕事ができなくなるので、被害をこうむっているので払えない、とか正規の権利者に払うから正規の権利者であることを証明するものをもってこい。などと言い出し始めるものだ。

金融機関やローン、リース会社、水道光熱費、そして税金や社会保険などは、このような貸倒損失のリスクは売値に組み込まれているのだからそんなに心配することはない。
むしろ、社員の給与や買掛先の債務を優先すべきだと思うのだが、現実にはなかなかそうはいかない。

放置逃亡。要するに、放りっぱなし。
このような処理方法(処理しない方法)しか選べないところまで事業を荒れさせることは、かなり罪深いと思う。
しかし、このような終わらせ方が一番多いということも知っておかなければならない。

倒産し、[放置]したままで[逃亡]はしないケースについては、
[[放置] 小規模零細企業や個人事業者の倒産処理(最も多いケース)]
に記したので、参照いただきたい。

この放置逃亡が多い最大の理由は、倒産処理を甘く見ていたからに他ならない。

最後の最後まで頑張れば債権者も許してくれるだろう(債権者も納得してくれるだろう)、あるいは倒産しても何とかなるだろう、
とどこかでたかをくくっているのではないか。
しかし、一度つくった会社は終わらせなければならない。
それも債権者に納得していただける処理をしなければならない。
そのためには、[法人の破産]を地裁に申し立てて破産管財人に処理してもらうか、あるいは[任意整理]を弁護士に委任しなければならない。
そうした処理には費用がかかるのだ。その終わらせるための費用を用意するのは経営者の責任なのだ。
その費用が思いの外かかるのを知り、その費用が調達できないために放置逃亡がおこるのだ。

その尻拭いを回避しようとして放置逃亡の手段を選ぶと、どのようなデメリットが待っているのか?
それは、“時効”までの五年間は再起がほとんどできなくなる(場合によっては時効は十年になる)、という障害が待っているのだ。
今は、新たに株式会社をつくって代表取締役になることはできる。
会社はできるが、債権者はそれを容認してはくれない。
督促にさらされることからは回避できない。
どうか、[放置]、もしくは[放置逃亡]だけはしないように、これは経営危機コンサルタントのわたしからの助言だ。

以下の項目も参照されたい。
[倒産処理を甘く見るな]
[倒産ー放置逃亡ー時効]
[倒産の判断はいつするのか①(倒産時の二つの様相)]

わたしは、コンサルタントとして、じつはこの放置逃亡に関するアドバイスはしたことがない。
しかし、相談にこられた方がその後放置逃亡をしたというようなことはあろうと思う。が、その相談者がその旨の報告をしてくれなければ、わからないものだ。

以下の項目も参照されたい。
[放置逃亡が、なくならない]
[放置逃亡するとどうなるか]