わたしには【てるみくらぶ】を擁護する意図は全くない。
わたしの意図はこの素材で、事業経営の問題点、危機管理、破綻処理(倒産処理)、 倒産犯罪、などについて理解を深めていただきたいのだ。

【てるみくらぶ】が倒産し、金融機関から融資金をだまし取ったことで、[詐欺]で逮捕された。
この詐欺事件は、加害者である【てるみくらぶ】と被害者である[三井住友銀行]の問題に過ぎない。
三井住友側としたら、株主からの訴訟を想定したうえでの判断だと思われる。
この詐欺事件では、他の被害者である買掛先や一般消費者(顧客)は完全に“枠外”に置かれた。
その買掛先や顧客から[計画倒産]ではないかの声が上がっている。

この【てるみくらぶ】の倒産は、[計画倒産]なのだろうか。

[計画倒産]は、詐欺として扱われる刑事事件(犯罪)だ。
しかし、その厳密な定義はない。
詐欺が認められるのは、他人を欺罔(ぎもう:人をあざむき、だますこと)して錯誤に陥れることで、欺く意思がなければ成立しない。
【てるみくらぶ】は、被害者である(一)買掛先や(二)顧客、そしてか(三)借入先をだますつもりだったのか、が問われることになる。
(三)借入先については、[三井住友銀行]の告発で代表者などが逮捕されたので、その公判で明らかになることだろう。

では、(一)買掛先や(二)顧客についてはどうなるのか。

◆倒産の計画性はあったのか

これは一般論だが、会社の倒産の大きなパターンの一つとして、会社が資金的に行き詰った段階で金融機関などに融資を申し込んでいて、融資が実行されるだろうとの感触のあるときは買掛先や顧客と今まで通りの取引きをしているものだが、その融資が不調になると会社の資金繰りがつかなくなり、事業継続ができなくなり倒産の事態に陥ることがある。
この倒産のパターンは多い。

被害を蒙る買掛先や顧客は、騙されたと思って「計画倒産だ」と言うものだが、倒産会社は「金融機関に仕組まれた(騙された)」と思うものだ。

【てるみくらぶ】の場合、このパターンにあてはまるだろうか。
わたしは、【てるみくらぶ】は金融機関に融資を申し込んでいて、それが不調になったせいで倒産になった、という報道を見た記憶がある(いまあらためてそのような報道を探したが見つからなかった)。
その融資申し込み自体が詐欺的であったとしても、事業を続けようとしたための方策だったのであれば、詐欺とは言い切れないように思う。
さらに言えば、その融資が実行された後で会社は倒産を回避でき、事業の継続ができた可能性があったのであれば、その融資申し込みは倒産回避の施策であり、事業継続に方策だったと言えるだろう。

これも一般論だが、経営危機の最後の段階では、経営者はどこかで「最後の資金調達が不調になったら倒産か」、あるいは「倒産に至るかもしれない」、と思うことはあるものだが、これは比較的健全な事業状態でもあり得ることだから、これをして“倒産の計画性”と断定するのは酷というものだろう。
ただ、そのような資金的に不安な段階(わたしはこの段階を[【経営危機】不安定経営危機状態]と呼んでいる)は、資金が調達できなければ支払い不能、返済不能に陥り、倒産することは経営者には判っているはずだ。
「判っていなかった」という弁解を聞くことが多いが、それは判っていなかったのではなくて判ろうとしなかったのがほとんどだ。
では、その段階で倒産処理に入るべきだと断言できるものでもないのが、この経営危機(特に資金問題)の難しいところだ。
つまり、その段階で資金調達できて事業が継続することもあり得ない話ではないからだ。

【てるみくらぶ】の場合はどうだったのか。報道されている情報からは即断できないが、倒産の予兆を持っていたにもかかわらず資金調達に突っ走っていたように見える。
それは、もう“神頼み”のようだったのではないか。
誰か、適切にアドバイスしてあげられる人はいなかったのか。
会計士(公認会計士や税理士)、弁護士、経営コンサルタント、執行役員や部門長などの経営(事業)執行役などのボード、【てるみくらぶ】には適切な判断ができるスペシャリストはいなかったのか。
それとも、このチキンレースを“go for broke”とばかりに突っ走ってしまったのか。
そう考えると、[計画倒産]とは言い切れないが、“未必の故意”に近いニュアンスを含んでいるようにも見える。
結果として、被害の大きさを見るに会社の運営にかかわった人たちは罪深いことをしてしまったと言わざるを得ない。

◆倒産による経済的な受益者はいたのか

倒産に際して、被害者が出ているにもかかわらず、利益を得ている者がいた場合には、それも[計画倒産]と言われる場合が多い。
多くは経営者が私腹を肥やすパターンだ。
現金で、不動産や株式などで。
経営者の家族や友人に疎開させておく手法も多いものだ。

【てるみくらぶ】の場合はどうか。
これも報道の範囲だが、代表者が私腹を肥やしていた様子はない。
高い給与(役員報酬)を取っていたと非難されているようだが、その報酬額は特別高額であるとは見えない。その金額は株主総会や役員会(取締役会)の承認を経ているはずだから、本来非難されることではない。
役員報酬を急に減額したりすれば、社内の経理職員や会計士(公認会計士や税理士)、そして振り込み処理をしていれば金融機関にも知れることになり、問題化することもあり得るので、なかなかできないことだ。

この点は、経営者の説明責任や捜査の結果を待つしかないので、現段階では予断を与えることができない。

◆【てるみくらぶ】倒産は防げたか

この【てるみくらぶ】の倒産は、被害者に一般利用者(消費者)が多かったために報道などの話題性が高かったので注目されたが、倒産のかたちとしてはそれほど特異なものではない。
その後の報道を見ると、かなり早い段階から経営的には崩壊していたようなので、経営陣の判断に大きな問題があったと思われる。

経営陣は、経営ステージ(経営のどの段階にあるか)を正確に把握しておかなければならない。
・“事業モデル”に問題はないか。
“成長期”にあるのか、“停滞期”にあるのか、“衰退期”にあるのか。
業界全体が“退潮傾向”か、この会社だけが“退潮傾向”にあるのか。
・人材は充分に確保できているか。
・資金調達はできるのか。
これら、大きく分けると“シクミ(事業モデル)”、“ヒト(人材)”、“カネ(資金)”についての短期、中期、長期の展望を持っているかどうか、という極めて初歩的な経営の“危機管理”ができていなかった、と思われる。

事業経営者は、一般的には“拡大再生産”的な無限拡大を目指す事業計画を志向するものだが、ある段階から“縮小再生産”的なソフト・ランディング志向に切り替えなければならない事業体は実に多いのだ。
日本の全会社(約300万社)の内、毎年6~8%(18~24万社)が“廃業”しているのだ(中小企業白書のデータによる)。そのほとんどが[倒産]で、[清算]によって廃業しているケースは稀なのだ。

おそらくは、ある段階で「このままでは事業が継続できなくなる可能性が高い」と判断はできたはずなのだ。
にもかかわらず、その問題に直視せずに、[資金が確保できれば事業は継続できる]と考えて、やみくもに資金調達を行い、将来起こるかもしれない[倒産]の事態に備えることはしていなかったのではないか。
そのような“ギャンブル”としての事業経営をしている経営者はたいへんに多い。
経営は本来ギャンブルではなく、エンジニアリングであるとわたしは思っている。
このことが判っている経営者は“経営リテラシー”があると見做せるだろう。
経営をギャンブルととらえている経営者は、破綻しなければ一定の評価されるのも事実なのだが、困った傾向だとわたしは感じている。

つまり、上に挙げた[ある段階]で、事業継続をあきらめて、被害者をなるべく少なくして破綻処理を志向するという方針を持っていれば、倒産は防げなかったにしても、被害をこれほどまでに大きくなる前にソフト・ランディングできただろうとは思う。
これができるのは、ひとえに経営者に“経営リテラシー”があることだろう。

倒産が防げたかどうかは、いまある資料に中では判断できないが、かなり早い段階で事業モデルの展開を行ったうえで、大きな縮小再生産の事業計画に転換すれば防げた可能性はあるが、このギャンブル志向の高い経営者たちでは無理だっただろう。

大変残酷な言い方だが、経営に向いている経営者とそうでない経営者がいるのだ。

※ この【てるみくらぶ】倒産および逮捕の件は、問い合わせも多いことから断続的に解説的な連載をする予定です。
※ さらに【はれのひ】の倒産(と思われる事態)が重なり、問い合わせは急速に高まっていて、少し困惑してる。