※ このエントリーは、2014年6月18日に作成したものだが、より判りやすくするために2018年8月2日に三回目の改定をした。

事業経営が持続できなくなった場合、倒産(法人の破産)処理をしなければならないという決まり(法的根拠)はない。
その事業を放置して(何の処理もしなくて)、逃亡しようが今まで通りの居所にとどまっていてようが、それが罰せられるということはない。

では、どうなるか…。

[倒産]の定義は「債務超過でなおかつ資金不足で、債権者に支払い(返済)ができなくなり、事業を停止すること」だ。

事業経営が継続できなくなったということは、債務を負っていることだ。
・給与などの人件費。
・税金や社会保険。
・仕入れなどの買掛金。
・光熱水費などの一般管理費。
・事業所などの賃借料。
・金融機関などからの借入金。

それらの債務のどれか(いくつか)が払えなくなっている。

そうなると債権者はそれらの債務を取り立てることになる。
しかし、債務主体が会社であれば、連帯保証をしていない限り代表者や会社の役員に債務責任は発生しない。
とはいうものの、
・給与などの人件費は経営者に雇用責任があり
・仕入れなどの買掛金は発注責任がある
・賃借料なども契約書に従った連帯保証人に支払い義務が発生しているはず
・金融機関からの借入金は間違いなく経営者個人の連帯保証を取っている。

そのため、債権者の取り立てを無視することはできなくなる。

では、債権者はどのように取り立てるかというと、
・経営者などが連帯保証していないものは、会社の財産を換金して支払え、と迫る。
・連帯保証しているものは、連帯保証人に請求する。

これらをスムーズに行うために法的処理である[法人の破産]や私的整理である[任意整理]の方法があるのだ。

それら倒産処理を行わないで放置する(無視)とどうなるか。
・連帯保証していない分は、取り立てにさらされることになる。
・裁判を起こされるケースもある。
・経営者個人に支払い命令が出る場合もある。
・会社の債務の時効は五年だが、最大十年の時効のものもある。
・時効までの五年間(十年間)取り立てにさらされることになる。
・連帯保証分は連帯保証人に請求される。
・連帯保証人の財産で支払える(返済される)場合はいいが、その残債は個人が請求される。
・会社の債務の時効は五年だが、個人の債務の場合は十年になる場合もある。
・時効までの五~十年間取り立てにさらされることになる。
・債権者による債権者破産(第三者破産)の申立てをされる場合もある。
・当事者(倒産者)の破産と同様の処理がされる。
・財産が差し押さえられる恐れがある。
・税金などの滞納があると差押えを受ける。
・一般債権者からも差押えを受ける可能性がある。
・不動産はもとより車も差し押さえられる。
・給与も差し押さえられる。

これらの対応を倒産者(元代表者=社長)が一人で対応しなければならなくなるのだ。

元の居所を離れ、逃亡をするとどうなるか。
郵便物は郵便局に転送届を出せば新しい居所で受け取れるようになるが、住民票は大問題だ。
・住民票が移せなくなる。
・住民票を移すと、金融機関などはチェックして移動先まで追いかけてくる。
・一般債権者も追いかけてくる場合がある。
・住民票が移せない障害。
・就職ができなくなる(住民票が提出できない)。
・入進学ができなくなる(お子さんがいる場合はキツイ)。
・地方税が払えなくなる。
・都道府県・市区町村独自の公共サービス・行政サービスが受けられなくなる。
・国民健康保険に入れなくなる。
・免許証の住所変更ができなくなる。

放置逃亡をしていた人が住民票を移すと、突然金融機関が訪ねてきたり、金融機関から内容証明が来たり請求書が来てびっくりするという話はよく聞く。

放置逃亡のリスクはこれだけではない。
再建再起に大きく影響が出てしまうのだ。
上のようなリスクを負って時効まで過ごしたら、人格に影響が出ないわけはない。
・家族関係、友人関係、仕事上の人間関係、ことごとく崩壊してしまうのだ。
そうなって廃人のような状態で相談にみえた方も何人かいる。
わたしには、手が施せなかったこともあった。

これらのリスクは時効が成立するまで続くことになる。
時効までは最大十年。
その間の心理的ストレスを考えると暗澹としてしまう。

わたしは、放置逃亡は決して勧めない。

相談者や依頼人が放置逃亡に思い至る最大の原因は費用の問題だ。
では、最低いくら費用を用意したらいいのか。
●予納金(少額管財)  23万円。裁判所に払う費用(概算)。多少の変動はある。
●弁護士費用(着手金)   20万円。
●当事務所費用(着手金)  10万円。

弁護士費用は案件によって幅があるが、長期の延払いにしていただける弁護士に委任することになる。
この数字は、初期にかかるわたしが知っている最小限費用だ。

ある弁護士は、毎月二万円の延払いに応じていただいたのだが、先日連絡があって、
「毎月二万円でも二年たつと50万円近くになります。このケースは生活が安定したので今月から毎月五万円払いますと連絡がありました」
ということだった。関西地方の依頼人だ。

倒産処理(初期)費用として約53万円。
年商、何千万円、何億円という事業をしてきた経営者が、最後に50万円ほどの資金が用意できないというのだろうか。
これが用意できないで放置逃亡のリスクを負って生きるのか。

併せて「倒産処理を甘く見るな」をぜひ参照いただきたい。

わたしが放置逃亡を決して勧めない理由がお判りいただけただろうか。

【追記】

放置逃亡がその後どのような経緯をすごしたかは、[百の倒産があれば百の決着がある]のであり、すべてが同じような経緯を迎えるわけではないが、標準的な流れは以下のようになる。

倒産後、一定の期間(一週間の場合もあれば一か月の場合もあり、それ以上の場合もある)を経由してから今まで住んでいたところに戻る。

そこに債権者が殺到する。

・税金
会社に財産(預貯金や売掛金)があれば、差押えが起こる。
代表者個人が請求されることはないが、事情を聴かれることはある。

・社会保険
会社に財産(預貯金や売掛金)があれば、差押えが起こる。
代表者個人が請求されることはないが、事情を聴かれることはある。

・給与などの労働債権
代表者に連絡できなくても、労働基準監督署に行って手続きすれば、立て替え払いなどに応じてくれる。
本来であれば代表者が連帯保証することだが、いなくても応じてくれる。
誠意のある対応ができないと、代表者に対して裁判を起こさることもある。
社員や役員との人間関係は毀損されることは避けられない。

・金融機関
金融機関は(根)抵当権があれば実行する(不動産などは任意売却や競売になる)。
残債があれば、代表者個人に請求する。破産しなければずっと請求する(定期的に内容証明が来る)。
連帯保証人があれば、その者に請求する。財産があれば差押えなどの手段が起る。

・ローンやリース

おおよそ代表者が連帯保証してるので、ローンやリース物件は改修され、残債があれば代表者個人に請求される。
これも、破産しなければずっと請求する(定期的に内容証明が来る)。
代表者以外の連帯保証人があれば、その者に請求する。財産があれば差押えなどの手段が起る。

・水道光熱費など
会社が事業停止すれば、請求されることはない。

買掛金や外注費などの一般債権
代表者が連帯保証していなければ、代表者個人に支払い義務はない。
とはいうものの、買掛金の債権者は代表者に支払いを求めていくことが多い。
会社として(代表者が)支払いの約束をしてるにもかかわらず、支払できないのは許せない、という論理だ。
毎日のように、自宅に請求に来たり、電話をしてくるような債権者もある。
そこで、個別にいくらかを支払う約束をしてしまうことになる。
毎月三万円とか、五万円とか。
…それらの総額を考えると、ちゃんと破産処理しておいた方が支出額が少なかった、というケースも少なくない。
これらの債権者が多いと、代表者の再起への大いなる障害になる。
就業しても、給与が差し押さえられることはないが、会社に請求が起こるようなこともあり得る。

完全に安穏な生活が訪れるのは、時効以降ということになる。

以下の項目も参照されたい。
[倒産処理を甘く見るな]
[倒産ー放置逃亡ー時効]
[倒産の判断はいつするのか①(倒産時の二つの様相)]
[放置逃亡が、なくならない]