※ このエントリーは、2014年9月17日に作成したものだが、より正確を期すために 2018年4月15日に五度目の修正をした。

破産申立てに際して、詐害行為があると問題が生じる、という話はよく聞く。

具体的にはどういうことなのか。

詐害行為とは、破産処理に際して破産者である債務者(会社であれ個人であれ)が故意に自己の財産を減少させ、債権者が正当な弁済を受けられないようにする行為を指す。
これには[詐害行為取消権]があるので、債権者に指摘され破産管財人に否認されれば返還しなければならなくなる。

破産処理にはいくつかの原則がある。
・債務者の財産は換金され債権者に配当される。
・優先債権(税金、社会保険、労働債権など)を除き、配当は債権者に一律でなければならない。
これらのルールに違反することが詐害行為となる。

どのような行為が詐害行為となるのか。
・破産申立て直前に不動産などの財産を誰かに贈与したり安く売却したりすること。
・破産申立て直前に不動産などの財産に担保権を設定すること。
・破産申立て直前に特定の債権者に支払いを起こしたり返済すること。
・破産申立て時に認められている自由財産以上の現金や預金を隠したりすること。
などがある。

明らかに詐害行為があり債権者に指摘されれば、破産管財人によって否認され、動いた財産は元に戻されることになる。

ただ、ここに大きな問題がある。
仮に、破産申立て直前に[500万円]の財産があったとする(給与などの労働債務はないものとする)。
そのまま申立てれば、優先債権の税金や社会保険に行ってしまうか、債権者への配当となってしまう。
しかし、どうしても返済したい個人(母親)からの借入金(300万円)や、連鎖倒産しそうな買掛金(零細企業5社計200万円)にはまわらない。
倒産する者の意志としては、個人(母親)からの借入金の返済や連鎖倒産しそうな買掛金に回したいのだが、それでは詐害行為になってしまう。

このような場合、申立て代理人の弁護士に相談するとどうなるか。
かなりの確率で「ノー!」と言われることだろう。

しかし、申立て前処理の段階でこれをやれば救済されることはあり得るのだ。
詳しくは、[申立て前処理について]を参照のこと。
ポイントとなる要素は、
・倒産の全体の規模に対して、優先して支払いたい債務の比率。
・優先して支払いたい債権者の数。
・その債権額。
・支払いから申立てまでの期間。
・事業停止から破産申し立てまでの期間。
・債権者の全体像(数と金額)。
・申立て代理人の弁護士は協力的か。

これらを厳密にクリアできれば、救済される可能性はあり得るのだ。

倒産する者にとって、詐害行為になる可能性があっても、優先的に救済すべき債権者は、できるなら救済したいというのが本音だ。
その可能性があるのに、本来は依頼人の利益を守るべき弁護士である申立て代理人によって、その芽を摘まれるのはとてもつらいことだ。

破産処理の運用では、詐害行為取消権が行使されたとしても(される可能性がある場合でも)、その弁済分だけ元に戻せばいいのだ。
詐害行為があるケースでは破産が認められないというわけではなく、その部分だけ元に戻せば破産は実現できるのだ。
そのようになる可能性があるのに、本来は依頼人の利益を守るべき申立て代理人によって、その芽を摘まれるのはとてもつらいことなのだが、運用を知らない代理人だと受任していただけないことは大変に多い。

わたしは考え方は、このような事態での“見逃しの三振“はしたくないので、“最後までバットを振るべき“だと思うのだが、協力していただける弁護士はかなり少ないのが現実なのである。
これを実現するのは、きわめて難易度の高いことなのだが、“針の穴を通すように”綿密に進める方法もないことはない。ここには詳しく書けないので、どうか相談にいらしていただきたい。

【付記】

これら[詐害行為]や[偏頗弁済]に関する質問や問い合わせはたいへんに多い。
しかし、詐害行為や偏頗弁済に関しては、申立て代理人の弁護士にとっては破産管財人とやりあう局面も想定でき、非合法なことではないが“懲戒問題”にも及びかねないたいへんデリケートな要素をはらんでいる。
申立て代理人の弁護士や破産管財人から情報が出てくることはないだろうし、「こうすればうまくいく」と行った情報もおそらくはネット上にはないと思われる。

当事務所は800件以上の相談に対応し、可能な限りの[詐害行為]や[偏頗弁済]を回避してきた実績がある。
もちろん、そのような相談に乗っていただける弁護士もいる。
[弁護士(申立て代理人)の紹介]はこちら。

このエントリーをご覧の方で、詐害行為に該当するかどうかを知りたい方は当事務所に相談に来ていただければ、かなり明確にそのガイドラインを示すことができる。
100の倒産があれば、100の背景があるのであり、一律に「こうなります」とは断定できないのだ。

併せて、 [偏頗弁済とは] も参照していただきたい。