※ このエントリーは2014年1月16日に作成したものだが、より正確を期すために 2017年11月12日に五度目の修正をした。

計画倒産という言葉をよく聞くこととだろう。
果たしてどんな意味なのか。

弁護士などに確認すると、
“計画的に詐取しようという意思を持って会社を設立して倒産をむかえること“
で、それは犯罪だ、といわれる。
一般的には、会社を設立しその会社が買掛け(仕入れ)をしてその買掛商品を換金して倒産するというような手口だ。
法律用語ではないようだ。

そのような犯罪を意識して会社を設立する例はあると思うが、ほとんどの事業経営者は倒産を意識して会社を設立することは考え難いし、一般的には倒産を視野に入れて会社を運営することもないだろう。
これは、健全な経営者であればほぼ100%そうだと断言できるように思う。

しかし、事業が悪化して倒産が避けられないような段階に至った場合、

・会社にある現預金を、優先的に処理したい債務に充てる。
・会社の資産を換金して、優先的に処理したい債務に充てる。

など、ある程度の計画を持ってその倒産の事態を迎えることは経営判断としては当然のことで、
それは犯罪としての[計画倒産]ではなく、経営者の健全な判断による[計画的倒産]と言うべきではないか。
社員の給与などの労働債権を残したまま、あるいは外注下請け会社が連鎖倒産するであろうことが避けられなさそうな事態での倒産の事態を迎えることは、経営者としてはどうしても避けたいことになる。
ただし、避けられない倒産を前に、
・借入金をして、それを隠蔽する。
・仕入れをしてそれを換金して隠蔽する。
は、
禁じられた行為と言われる。
いわるゆ[偏頗弁済(へんぱべんさい)]、[詐害行為(さがいこうい)]である。
ちなみに、詐害行為とはそれが発見された段階で処罰されるというようなものではなく、
破産管財人によって否認され、返還を求められることになる。
申立て代理人の弁護士に、それがあると受任できない、と言われることもあるようだ。

倒産直前に借り入れを起こしても、その借入金の使途が認められれば(あるいはほとんどが会社に残っていれば)それは問題ない。
仕入れの買掛金が残るのも、それらが転売したりされていなければ、それも問題になることはない。

そもそも避けられない倒産を予感した場合、まったく手をこまねいたままただちに破産手続きに入ることのほうが不自然というものだろう。
ましてその前段階の経営危機状態にあって気になる債務を処理しておこうと考えるのは、経営者として健全な判断だ。

しかし、避けられない倒産の事態、その前段階の経営危機状態、その段階では多くの経営者は倒産を回避するために、さまざまな手段で資金調達を図っているものだ。
多くの倒産は、その資金調達ができなくてやむを得ない形で倒産の事態に至るものなのだ。

経営危機の段階で、資金調達をすれば回避できるか(その段階で回避できてもそのまま事業継続できるか)の判断は、もっとも重要な経営危機のポイントなのだ。
多くの経営者が、この判断を誤って悲劇的な倒産を迎えているのをわたしはたくさんの相談対応事例で目の前で見聞している。

わたしが知っている倒産の事案を多くこなしている有能な弁護士は、避けられない倒産が認識された段階からは、詐害行為にならないぎりぎりのところで最後に残った資金の有効な活用使途を考えるものだ。
わたしが相談を受けるケースでは、この部分のアドバイスは欠かせない。
申立て弁護士に嫌な顔をされても可能と思われる限り追求する。
要は、見逃しの三振はしないという意志だ。
破産管財人に否認されたら、その部分だけ返却すればいい場合がほとんどなのだから。

経営者であれば、優先債権の[税金や社会保険][労働債権(給与などの人件費)]の、どちらを優先するかは判断を待つまでもないだろう。
もちろん、労働債権を確保する手立てをしたうえで倒産の処理に入らなければならない。
そのためには、会社にある財産をどうするかなどの作業が必要になり、自ずと一定の時間は要る。
そうしなければ、
・社員の労働債権が守れなくなり得るし、
・恩のある借入の返済ができなくなるし、
・小規模零細企業の連鎖倒産を止めることはできないからだ。
それは計画倒産ではない。決して計画倒産ではないと倒産経験のあるわたは考える。
経営危機の最後の段階(倒産の意思決定の直前の段階)を“計画的に”進めただけだからである。

つまり計画倒産というのは現実的ではなく、むしろ詐害行為になるかならないかが問題なのだ。
それは、とりもなおさず申立て代理人の弁護士と破産管財人のせめぎあいということになる。
破産管財人に対して、依頼人を守ってくれる申立て代理人の弁護士でなければ依頼人は浮かばれないのだが、そういう小規模零細企業の立場になって戦ってくれる弁護士は少ない。

ただし倒産の事態ををむかえると、債権者に「それは、計画倒産だ」といわれることは、ある。
債権者にしてみれば、事前に知らされることもなく(事前に知らせるとどうしても混乱が起こるので、知らせることはできないものだ)、予兆も感じていなかった(そうした予兆も感じさせないものだ)ため、計画倒産と言われてしまうものなのだが、これだけは避けられない。

【付記】

この[計画的倒産]をはじめ、[詐害行為]や[偏頗弁済]に関する質問や問い合わせはたいへんに多い。
しかし、計画的倒産そして詐害行為や偏頗弁済に関しては、申立て代理人の弁護士にとってはたいへんデリケートな要素をはらんでいる。
申立て代理人にとっては、この“計画的倒産や詐害行為、偏波弁済”に抵触しそうな案件は非合法なことではないが、
・破産管財人とやりあう局面も想定でき、
・場合によっては“懲戒問題”にも及びかねない

ところがあり、初対面の弁護士ではとうてい真正面からは取り合ってくれないだろう。

この件、申立て代理人の弁護士や破産管財人から情報が出てくることはないだろうし、「こうすればうまくいく」と行った情報もおそらくはネット上にはないと思われる。

当事務所は800件以上の相談に対応し、可能な限りの[詐害行為]や[偏頗弁済]を回避してきたし、[計画倒産]だと破産管財人に指摘されたことは一度もない。
もちろん、そのような相談に乗っていただける弁護士もいる。
[弁護士(申立て代理人)の紹介]はこちら。

このエントリーをご覧の方で、[計画倒産]に該当するかどうかを知りたい方は当事務所に相談に来ていただければ、かなり明確にそのガイドラインを示すことができる。
100の倒産があれば、100の背景があるのであり、一律に「こうなります」とは断定できないのだ。