当事務所の協力者であるとともに、スタッフブログを担当していただいている砂須賀野さんのお父さんは倒産経験者でした。

そのスタッフブログで、倒産者の家族の記憶を三回にわたって書かれました。
わたしはこのような証言を読むといつも、胸が詰まるような、心が波打つような思いになります。

倒産者の家族の証言はたいへんに貴重な記録です。
[倒産体験] (1)~夜逃げ、転校~
[倒産体験] (2)~子供だって何が起きたかを知りたいのです~
[倒産体験] (3)~放置、逃亡~

この証言を見ると淡々と描かれているようですが、そうなるためには相当の時間が必要だったことと、かの女自身にタフな精神があった(あとから身につけたのかもしれません)からだと思います。

わたしは倒産の相談に応じる場合に、必ず家族のことをうかがいます。
そしてその家族の方々に、どのような影響が起こり得るか、について話すようにしています。
依頼人によっては、家族のことには触れないでくれ、という強い意志を見せる方もいらっしゃるのですが、この点はとても大事なことです。

砂須賀野さんのケースは、倒産の処理をせずに放置逃亡の道を選んだがために問題を残してしまった、と思われます。
さらに、砂須賀野さんと二歳年上のお姉さんがまだ小学生で幼かったからでしょうか、お父さんも詳しい話はしなかったようです。
うかがうところによると、お父さんが亡くなった後もお母さんはこのことにはあまり触れたがらないようです。
倒産の問題は時間が経ってしまうと〝触れたくない過去(触れられたくない過去)〝になってしまうために、なかなか正確に思い出せなかったり、積極的に語ることは少ないようです。

でも、砂須賀野さんの記述にもあるように、子供だって知りたいのです。
ですから、わたしは依頼人の方にはちゃんと話すようにアドバイスをします。
どのように話したらいいかと問われると、
「自分は家族の生活のために頑張ってきた。
「残念ながら、力及ばず事業の継続はできなくなった。
「この後は生活環境がガラッと変わる。
「つらい生活になるかもしれないが、自分もがんばるから、どうか理解してほしい」
のように話すようアドバイスします。
倒産は家族間であってもそこに加害者と被害者の関係をつくってしまうことが多いので、ここは一度謝る必要があるのです。それで解消するわけでもはないのですが、ご家族にとっては事態の理解はしやすくなります。

この時、会社の倒産処理を[法的処理(法人の破産)]なり、[任意整理(私的処理)]を行い、個人としても[個人の破産]を行っておけば、その後は〝裸一貫〝に戻るだけですから、債権者に追われたり、倒産を誰かに咎められることなく生きてくことができるのです。
そうした処理ができていれば、その後は自分自身と家族のことだけを考えればいいのです。
砂須賀野さんのお父さんはその処理をしなかったために、住民票も移せずご家族に無為の負担をさせてしまったのでしょう。
さらに、家族に無為の負担を負わせたことがお父さんにとっての精神的な負担になっていたのだと思います。

当たり前のことですが、倒産はゴールではありません。
当事者が倒産を一つのプロセスと位置づけ、再度たくましい経営者にあるいはたくましい社会人になるためには、経済的にも精神的にもリセットすることが大事なのです。
〝胸は張れなくても下を向かないでいられるような再起〝を目指していただきたい、と思うのです。

そのためには、
[倒産処理はきちんとすること]
[家族にはしっかり説明をすること]
がポイントになることを砂須賀野さんのブログは明らかにしているように見えます。