※ このエントリーは、2014年9月17日に作成したものだが、より正確を期すために 2017年12月11日に五度目の修正をした。

破産申立てに際して、偏頗弁済は認められない、とはよく言われていることだ。

具体的にはどういうことなのか。

偏頗弁済行為とは、破産処理の大原則であるところのすべての債権者に対して平等に返済(配当)しなければならない、という決まりを破ることで[詐害行為取消権]に該当するとみなされることである。

偏頗とは、“頗る(すこぶる)、偏って(かたよって)”いること。
すなわち特定の誰かに偏って支払ったり返済したりすることを指す。主に倒産直前にこれを行うこと。
債権者に指摘されたり破産管財人によって否認されると、[詐害行為取消権]によって返還しなければならなくなることがある。

どのような行為が偏頗弁済になるのか。
・破産申立て直前に特定の買掛金を支払うこと。
・破産申立て直前に特定の借入を返済すること。

要は、詐害行為のところで述べた“破産申立て直前に特定の債権者に支払いを起こしたり返済すること”がこれにあたる。
すなわち、偏頗弁済は詐害行為の一つの形(最も多い形)なのだ。

ここで、“頗る”つまり極端な場合だけがこれにあたると解釈できそうだが、その基準はない。

運用に際してのハードルは三つある。

一つは申立て代理人の弁護士に受任していただけないことだ。
申立て代理人の弁護士に相談に行った場合に、明らかな偏頗弁済があれば、受任していただけないことがある。

二つ目は破産管財人によって見抜かれて否認されることだ。
その場合には、支払ったり返済したりした現金は、元に戻されることになる。場合によっては破産管財人によって裁判が起こされることもある。

三つ目は、あまりに悪質な場合には、裁判官によって、破産は認めていただけるが、[免責]が得られなくなる可能性がある。
それでは、何のために破産するか意味がなくなってしまう。

…ただ、ここには大きな問題がある。

仮に、破産申立て直前に連鎖倒産しそうな買掛先があったり、返済しなければその後の人間関係に大きな毀損が想定できる親族からの借入があったとした場合、そのまま申立てれば、優先債権の税金や社会保険に行ってしまうか、債権者への配当となってしまう。
しかし、連鎖倒産しそうな買掛先や、どうしても返済したい個人(母親)からの借入金にはまわらない。
倒産する者の意志としては、連鎖倒産しそうな買掛金にや、個人(母親)からの借入金の返済や回したいのだが、それでは偏頗弁済になり詐害行為になってしまう。

このような場合、申立て代理人の弁護士に相談するとどうなるか。
「ノー!」と言われるのは、避けられないだろう。上の一つ目のハードルだ。
なぜならば、破産管財人に発見されて、一も二もなく[詐害行為取消権]を発動される(上の二つ目のハードルだ)ことになるからだ。

この問題が救済されることはあり得るのか。

100の倒産があれば、100の決着がある。
この問題は一般論では片づけられない要因が大きい。

以下のような要因が左右する場合も大きい。
・倒産の全体の規模に対して、優先して支払いたい債務の比率。
・優先して支払いたい債権者の数。
・その債権額。
・支払いから申立てまでの期間。
・事業停止から破産申し立てまでの期間。
・債権者の全体像(数と金額)。
・申立て代理人の弁護士は協力的か。

すなわち、申立て前処理の段階でこれをやれば救済されることはあり得る。
詳しくは、 [申立て前処理について] を参照していただきたい。

ポイントとなる最大の要素にの一つは、申立てまでの時間だ。
一定の時間が経由してからの申立てであれば、救済される可能性はあり得る。
破産申立てまでに半年以上の時間があれば救済される可能性は高い、と言えるだろう。

もう一つは、申立て代理人の弁護士が協力的かどうか、だ。
ハナから「一切の返済や支払いを認めない」と言うような弁護士では相談するまでもないだろうが、破産管財人に咎められないぎりぎりのところをいっしょに考えていただける弁護士もいることはいる。
どうか、そういう有能な弁護士を確保していただきたい。

弁護士にとって、申立て代理人を引き受けるということは、単に地裁に破産の申立てを行うことを意味している。
倒産者の利益を守ろうとすることは、受任の領域には含まれていないようなのだ。
あまり安い弁護士は、まぁ、期待はできないものだ。

倒産する者にとって、偏頗弁済になって詐害行為取消権が行使される可能性があっても、優先的に救済すべき債権者は、できるなら救済したいというのが本音だ。

破産処理の運用では、詐害行為取消権が行使されたとしても(される可能性がある場合でも)、その弁済分だけ元に戻せばいいのだ。
詐害行為があるケースでは破産が認められないというわけではなく、その部分だけ元に戻せば破産は実現できるのだ。
そのようになる可能性があるのに、本来は依頼人の利益を守るべき申立て代理人によって、その芽を摘まれるのはとてもつらいことなのだが、運用を知らない代理人だと受任していただけないことは大変に多い。

わたしは考え方は、このような事態での“見逃しの三振“はしたくないので、“最後までバットを振るべき“だと思うのだが、協力していただける弁護士はかなり少ないのが現実なのであるが、極力協力してくれる弁護士もいる。

【付記】

これら[詐害行為]や[偏頗弁済]に関する質問や問い合わせはたいへんに多い。
しかし、詐害行為や偏頗弁済に関しては、申立て代理人の弁護士にとっては破産管財人とやりあう局面も想定でき、非合法なことではないが“懲戒問題”にも及びかねないたいへんデリケートな要素をはらんでいる。
申立て代理人の弁護士や破産管財人から情報が出てくることはないだろうし、「こうすればうまくいく」と行った情報もおそらくはネット上にはないと思われる。

当事務所は800件以上の相談に対応し、可能な限りの[詐害行為]や[偏頗弁済]を回避してきた実績がある。
もちろん、そのような相談に乗っていただける弁護士もいる。
[弁護士(申立て代理人)の紹介]はこちら。

このエントリーをご覧の方で、偏波弁済に該当するかどうかを知りたい方は当事務所に相談に来ていただければ、かなり明確にそのガイドラインを示すことができる。
100の倒産があれば、100の背景があるのであり、一律に「こうなります」とは断定できないのだ。

併せて、[詐害行為とは]も参照していただきたい。