※ このエントリーは、2012年11月に作成したもの(三本)を、より判りやすくするために2014年5月4日に一本のエントリーに統合した。

【費用】

少額管財とは、東京地裁(民事20部)が開発し、2002年(平成14年)4月から開始された倒産処理の運用方法である。

そもそも[破産処理(法人の場合も個人の場合も)]は地方裁判所の裁量で行われるものなのだ。
すなわち、大まかな運用方法の全国的な基準はあるが、細部にわたる個別的な運用方法は地方裁判所の裁量に委ねられているのだ。
倒産が多くなり、しかも放置逃亡が少なくならない現状から、〝低費用〝で、〝速成〝できる運用方法を模索した結果、この少額管財が開発されたものと思われる。

負債総額8,000万円、うち経営者の連帯保証分が6,000万円ある場合。
従来の運用と少額管財の運用の差は以下のようになる。
【従来の予納金】               【少額管財】(東京地裁の場合)
法人の破産の予納金額=100万円     法人と代表者一名の個人破産分
個人の破産の予納金額= 80万円     の少額管財予納金額
合計[180万円]                 [20万円]
その差額は160万円。

もちろん、すべての案件を少額管財で受けつけてくれるわけではなく、余力があったり、規模が大きかったり、難易度が高いものは従来の予納金を要求される(管財事件と呼ばれている)が、小規模なものは少額管財で受け付けてくれるようになった。
少なくとも、東京地裁の場合は。

ここに問題の大きなひとつがある。

【対応地方裁判所】

東京地裁で開発された少額管財は、東京地裁では受け付けてくれるが、東京以外の地方裁判所では、必ずしも同様に受け付けてくれるわけではないのである。

東京地裁に集中した運用方法。
これが、現状(2014年5月)段階の少額管財の最大の問題点だろう。

大都市の地裁でこの少額管財を受け付けてくれるところは少しずつ増えてはいるが、まだまだ少ないのが現状だ。

先の例に従えば、差額が160万円になり、倒産処理(破産処理)の地方格差が明らかとなってしまう。

東京以外の地方裁判所で、この少額管財を受け入れてもらうにはどうするか。
まず、その地裁に相談することだ。
その場合、東京地裁で実際に行ったことがある申立て代理人(弁護士)がお願いすると、ではやってみようか、と受けてくれる場合はあるらしいが、なかなかうまく行かないのが実情のようだ。

受け入れていただけない場合はどうするか。
東京の弁護士に依頼すれば、顔なじみの東京地裁の事務官に頼んで、東京地裁で受け付けていただけるようにしてもらえる可能性がある。
地方の弁護士でも、東京地裁の民事部の事務官とのコネクションがあればもちろん可能だろう。

具体的には、どこかに東京との繋がりがあれば、かなりの確率で受け付けてくれる。
例えば、債権者の本社が東京にある、などの繋がりがあれば。

それがなくても相談するだけの価値はある(なにせ、差額が160万円だから)。
その場合は破産処理が東京で行われることになる。破産管財人も東京の弁護士が務めることになる。債権者集会も東京地裁で行われる。
倒産が起こった都市はほとんど埒外に置かれてしまう。

そうなると、倒産処理(破産処理)は処理のための処理になってしまうおそれがある。
〝低費用〝と〝速成〝を実現するとそうなってしまったということだろうか。

【対応弁護士】

すでに述べたように、少額管財は東京地裁に集中する傾向がある。
ということは、少額管財の経験を積むことができる東京の弁護士(破産管財人も)のスキルが上がるということだ。
このことは、地方の弁護士のスキルが上がらないということに他ならない。

少額管財に限らず倒産処理に関しては、ここ十五年ほどの間に弁護士格差が相当に出てきたのを感じている。
倒産処理をたくさんやっているし、破産管財人になる機会も多い東京の弁護士と、倒産処理にあまり遭遇しない地方都市の弁護士との格差が厳然としてでてきたのだ。
これは、地裁にも言えることだ。すなわち、法人が多く倒産の多い東京などの大都市の地裁と、倒産の案件が少ない地方都市の地裁との経験量格差が、大きくなってきているのだ。

つまり、東京でよく倒産案件をやっている弁護士は、少額管財の運用については熟知しているのに、あまりやったことのない弁護士は少額管財ばかりでなく、倒産の運用についても、例えば予納金を安くしてもらえるように地裁に交渉できること知らないというようなことが起こっているのである。
もちろんこれは地方の弁護士に限らず、東京の弁護士でも倒産案件をやらない弁護士では同じなのだが。

そのために、そういうキャリア不足から来る融通の聞かない弁護士(や破産管財人)に当たってしまい困っている方からの相談も近頃はよくあるのである。

倒産に特化していると広告を出している弁護士事務所はどうか。
東京で広告を出しているような弁護士事務所は、それは間違いなく少額管財の運用を熟知している。
熟知はしていようが、それが倒産(少額管財)の申立て代理人に適しているかというと、これは別物だ。
倒産(少額管財)の問題は、会社を終わらせる作業だけではなく、そこから再起するという面を持っている。
倒産に特化している弁護士事務所は、おおよそ事務能力に優れてはいるので、債権者対応や裁判所対応は充分できるようだが、再起に向けての対応はおぼつかない傾向が強いようだ。これはそうした事務所に対応してもらった依頼人から聞いたところだ。

ともあれ、少額管財を適用してもらいたかったら、申立て代理人の弁護士に徹底的に質問することだ。
「経験はあるのか」
「適用可能か」
「どの地裁でやるのか(東京地裁に持っていくのか)」
「費用は」
などなど。
その答えがあやふやだったら、違う弁護士に行ったほうがいい。