法人の破産における【少額管財】とは何か〜そのメリットと注意点

経営危機コンサルタント・内藤明亜のブログです。

法人および経営者個人の破産処理において、当事務所がお勧めするのは【少額管財】と呼ばれる倒産処理の方法ですが、これは従来の方法に比べて「予納金が安くて済む」「時間がかからない」というメリットがあります。

この【少額管財】について3回に渡ってご説明しています。

1.法人の破産における【少額管財】とは何か〜そのメリットと注意点(この記事)

2.法人の破産において、少額管財を実現するための要件

3.少額管財を実現するための【申立て前処理】について

この記事では、「少額管財とは何か」そして「そのメリットと注意点」についてお伝えします。
 
法人の破産における【少額管財】とは何か〜そのメリットと注意点
 

少額管財とは何か

「少額管財」とは、東京地裁(民事20部)が開発し、2002年(平成14年)4月から開始された倒産処理の運用方法です。

実は、「破産処理」については法人の場合も個人の場合も、大まかな運用方法の全国的な基準はあるものの、細部にわたる運用方法は地方裁判所の裁量に委ねられています

倒産件数が多くなる反面、予納金が高額なことから法的破産処理をせずに【放置・逃亡】が少なくない現状から、「低額」かつ「迅速」にできる運用方法を模索した結果、この少額管財が開発されたものと思われます。

その特徴は、通常の管財事件と比べて

・予納金の金額は法人の破産と経営者個人の破産がセットで20万円程度(東京地裁の場合)で、かなり低額で済むこと

・手続きが簡易で時間がかからないこと

が挙げられます。

以下、より具体的にご説明していきます。

 

少額事件のメリット①:予納金が安い

具体的な例でご説明しましょう。

(例)負債総額8,000万円、うち経営者の連帯保証分が6,000万円ある場合

従来の運用(通常の管財事件)と「少額管財」での運用の予納金の差は以下のようになります。

【従来の予納金】(通常の管財事件)               
法人の破産の予納金額=100万円     
個人の破産の予納金額= 80万円     
合計 180万円               

【少額管財】(東京地裁の場合)
法人と代表者一名の個人破産の少額管財予納金額=20万円

その差はなんと160万円にもなります。

少なくとも東京地裁の場合は、中小零細企業における破産のように小規模なものの多くは少額管財にて処理を受け付けてくれるようになりました。

しかし後述のように、「少額管財を実現するための要件」はありますし、すべての案件を少額管財で受け付けてくれるわけもありません。
債権者数が膨大など規模が大きかったり、債権者との間に揉め事があるなど難易度が高いものは、通常の管財事件での処理となり従来の予納金を要求されることがあります。

 

少額事件のメリット②:比較的短期間で終わる

メリット①として「予納金が低額で済む」とお伝えしました。

このことは、「破産管財人の報酬も低額になる」ことを意味します。
なぜなら倒産処理においては、破産管財人の報酬は倒産者が納めた予納金から支払われことになるからです。

報酬が低額なのですから、当然、破産管財人の作業負担は少なく抑えられるわけで、つまり迅速で簡易な手続きで終結するということになります。

実はそのためには、「破産管財人の作業負担を減らす必要」があります。

その方法が、破産申立て代理人弁護士による【申立て前処理】です。申立て代理人の事前の作業によって、破産管財人の作業負担を減らすわけです。

申立て前処理にはさまざまな作業があります。
詳しくは、【申立て前処理について】のページをご参照ください。

 

少額事件の注意点①:すべての地裁が受け付ける運用方法ではない

冒頭でお伝えしたように、破産処理の運用は各地方裁判所に委ねられている関係で、東京地裁で開発された少額管財は、東京地裁では受け付けてくれるものの、東京以外の地方裁判所では必ずしも受け付けてくれるとは限りません。

大都市の地裁でこの少額管財を運用するところは少しずつ増えてはいるものの、まだまだ大多数ではないのが現状です。

先の例では、通常の管財事件と少額管財では予納金の差額が160万円にもなるのですから、倒産処理(破産処理)における予納金の地方格差は明らかです。

では、東京以外の地方裁判所で、この少額管財を受け入れてもらうにはどうしたら良いのでしょうか。

その地裁に相談してみる

その場合、東京地裁で実際に少額管財を行ったことがある申立て代理人(弁護士)がお願いすると「ではやってみましょうか」と受けてくれる場合があるようです。

が、それでも受け入れていただけない場合は下記の方法があります。

東京地裁で受け付けてもらう

東京の弁護士に申立て代理人を依頼すれば、顔なじみの東京地裁の事務官に頼んで、東京地裁で受け付けていただけるようにしてもらえる可能性があります。
(地方の弁護士でも、東京地裁の民事部の事務官とのコネクションがあればもちろん可能だと思われます)

それ以外にも、どこかに東京とのつながりがあれば、東京地裁はかなりの確率で受け付けてくれるようです。
例えば、債権者の本社が東京にあるといった場合です。

それがないとしても相談するだけの価値はありますので、あきらめずに相談してみましょう(なにせ、差額が大きいのですから)。

東京地裁が受け付けてくれた場合は、破産処理は東京で行われることになります。
破産管財人も東京の弁護士が務めることになりますし、債権者集会も東京地裁で行われます。

 

少額事件の注意点②:破産処理を多く手がける弁護士とそうでない弁護士の差

すでに述べたように、少額管財は東京地裁に集中する傾向がありますので、少額管財の経験を積むことができる東京の弁護士(破産管財人も)のスキルは地方都市と比べて上がることになります。

それは反面、地方の弁護士は少額管財のスキルがなかなか上がらないということを意味します。

少額管財に限らず倒産処理に関しては、ここ20年ほどの間に弁護士格差が相当に出てきたのを感じます。

倒産処理をたくさん手がけ、破産管財人になる機会も多い東京の弁護士と、倒産処理にあまり遭遇しない地方都市の弁護士との格差が厳然とあると思います。

つまり、東京で倒産案件を多く扱う弁護士は、少額管財の運用について熟知している一方、地方であまりやったことのない弁護士は少額管財ばかりでなく、倒産の運用についても、例えば地裁に対して予納金を安くしてもらう交渉ができることを知らないという現象が起こっているのです。

もちろんこれは地方の弁護士に限らず、東京の弁護士でも倒産案件を扱わない弁護士では同じことが起きるのですが。

そのため、倒産問題に関する”キャリア不足”から来る”融通のきかない弁護士(や破産管財人)”に当たってしまい困っている方からの相談もよくあるものです。

ともあれ、少額管財を適用してもらいたかったら、申立て代理人をお願いしたいと思う弁護士に徹底的に質問することです。


・少額管財の対応経験はありますか?

・自社の案件について少額管財の適用は可能でしょうか?

・どの地裁に申し立てますか?(東京地裁に持っていくのか)

・費用はどのくらいですか?

などなど。

もしその答えがあやふやだったら、違う弁護士を探した方がよいと思います。

 

倒産に特化した広告を出している弁護士はどうか

東京で「倒産案件に特化しています」と広告を出しているような弁護士は、間違いなく少額管財の運用を熟知しています。

しかし、少額管財を熟知していることと、倒産する経営者の相談相手としてふさわしいか、というのはまったくの別問題です。

少額管財を含む倒産処理の問題には、会社を終わらせる作業だけではなく、経営者が倒産からいかに再起するかという大きな課題があります。

倒産に特化している弁護士は、おおよそ事務処理能力に優れてはいるので、債権者対応や裁判所対応は充分できると思いますが、一般的には経営者の再起に向けての対応までカバーはしていません。
(これは倒産に特化した弁護士への相談経験のある複数の経営者から聞いた話です)

経営者の再起については、 残念ながら弁護士のお仕事の範囲外なのです。

一方、当事務所は、倒産者の再生再起のお手伝いもしています。

早めに相談に来ていただければ、「第二会社で事業の一部継続を可能にする」「倒産後の経営者の生活費をある程度確保する」など、何らかの対応策は発見できるものと思います。

 

少額事件の注意点③:少額管財を実現するための要件がある

先に申し上げた「少額管財を受け付けてくれる地裁を選ぶ」というのは、少額管財実現の要件の一つですが、それ以外にも「弁護士が申立て代理人になっていること」や「申立て代理人による【申立て前処理】が行われていること」も要件としてあります。

詳しくは、【少額管財を実現するための要件】ならびに【申立て前処理について】のページをご参照ください。

以上、述べてきたように少額管財は予納金が少なくて済むという大変大きなメリットがありますので、当事務所では法人の破産処理は少額管財での処理を目指すことを基本方針としています。

経営者の中には、倒産処理には多額の費用がかかると思い込み、「そんな費用はないから逃げるしかない」と【放置・逃亡 】を選んでしまう方が非常に多いものです。

しかし【放置・逃亡】の先には、精神的ストレスが非常に大きく日常生活に制約も多いという厳しい現実が待っています。

ですので【放置・逃亡】を選ぶ経営者を一人でも減らし、少額管財での倒産処理が実現できるようなお手伝いをして、経営者が再起できる環境を整えたいとわたしは心から思います。

(初出:2012年11月 旧タイトル:少額管財とは 費用・地裁・弁護士、最終修正:2021年2月5日)

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